朝を楽しむ朝美人アンバサダーのみなさんによるスペシャル連載コラム。月に30冊本を読んでいる倉口ゆうみさんが、初心者さんにも分かりやすい哲学書を厳選してご紹介します。(全3回)
おはようございます。朝美人アンバサダーの倉口ゆうみ(@yuumi__kuraguchi)です。
哲学書ラバーの筆者が、初心者の方にも親しみやすい哲学書を紹介するコラムを連載しています。全3回のうち、今日は最終回。
最終回の今回は、筆者の思い入れのある2冊をご紹介します。エッセイが好きな方、実践的な哲学思考を知りたい方に特にオススメしたい回です。
哲学が気になるけれど、とっつきにくそう…哲学気になるけれど、どんな本を読んだらいい?という方は1回目のこちらのコラムを→(哲学書ラバーが厳選するオススメ入門図書Vol.1)
自分と向き合うヒントをくれる哲学書は2回目のこちらのコラムを→(哲学書ラバーが厳選するオススメ図書Vol.2)
小説を読んでいるかのような美しい言葉で書かれた哲学エッセイ
「なんで」と問うことは、その問題から、わたしを引き剝がす試みだ。ひとは苦しんでいるとき、何に悩んでいるのかわかっていないことが多い。漠然とした、説明できないもやもやに、身体はむしばまれていく。苦しみはぴったりあなたに寄り添っているから、その姿を見ることはできない。だが、「なんで」と問うことによって、苦しみを、とりあえず目の前に座らせることはできる。そうすれば、苦しみがどんな顔かたちをしているのかがわかる。確認できる。まじまじ観察して、お茶でも出してあげよう。早く帰ってと説得してもいいし、そのまま一緒に暮らしてみても案外おもしろいかもしれない。
『水中の哲学者たち』 永井玲衣 著
この本は若き哲学研究者にして哲学対話のファシリテーターである永井玲衣さんの書かれた哲学エッセイです。
私、この本を読んでメモをとる手が止まりませんでした。だって、見てください。この美しくて瑞々しい言葉たち。これが哲学の本なの?まるで美しい短編集を読んでいる気分になりませんか?
同時に「あぁ…自分の悩んでいる過程って実はなんだか美しいかもしれない」永井さんの紡がれる言葉を読んでいてそう感じました。
現代に生きていると、問題をすぐに解決させたいと悩んだり、悩んでいる自分を責めてしまったり…悩みや問題に対して“焦り”の気持ちがつい出てしまうけれど、「なんで自分はこう思うのだろう?」と自分に問いかけて対話を沢山して、もがいて悩んで出てきた感情や言葉…その過程って実は素晴らしいものなんだ、と気付かせてもらいました。
哲学はシンプルに言うと「なんで?」と問う事ですが、でも、そうはいっても考えるのがしんどくなる時もあるし、もう考えたくないなって投げ出したくなる時もあります。
でも、それでも私たちは生きている限り考えて続けていかなきゃいけない。そんな人生の中に永井さんの言葉たちが、考える難しさ、泥臭さ、楽しさ、美しさを教えてくれます。
また、この本を読んで心を揺さぶられたのが「わかりあうことはゴールではない(P31)」「ひとそれぞれですね、と終わるのではなく、どの地点ならひとびとと共有することができそうかを研究する、何なら普遍性を見出すことができそうかを追求する(P226)」という言葉たち。
普段会話をしていると、相手の話を聞く時に共感しなきゃと思ったり、意見が違うと「まぁ、人それぞれですからね」と終わらせてしまったり…そんな場面ってありますよね。
でも、「わからさなに立ち向かうことは、大きな海の中で立ち泳ぎをつづけるみたいなものだ。ひとりはさみしいけれど、ひとと溺れることはちょっと心強くて笑える(P218)」と永井さんは綴っているように、みんなバラバラな存在だからこそ相手の話を聞いて分かりあおうとする姿勢を持ったり「もっとその話を聞かせて!」と相手に関心を持ってわからなさを共有しあったりすることで、新しい世界が広がっていくんだということも学べました。
哲学というと壮大な感じをイメージするけれど、この本は日常に起こることや永井さんが日々感じていることを、美しい言葉とリズムがいい文章で紡いでいる哲学エッセイなので、哲学書が苦手な方にこそおすすめしたい一冊。きっとあなたにも、すっと染みる一言が見つかるはずです。
「生きるのが苦しい…」そう思った時に手にとって欲しい哲学書。
「その価値観は、自分で選んだものか?」本を開いた帯の部分に書かれているこの言葉に目を奪われ、なんだか全身に電気が走ったような感覚がした筆者の思い入れがある本がこちら。
『絶望から希望へ 悩める若者と哲学者の“幸福”をめぐる対話』 岸見一郎 著
大ベストセラー『嫌われる勇気』『幸せになる勇気』の著者である岸見一郎さんと、悩める3人の受講生が「自分の手にはどうにもならないこと」に絶望せず、「どうすれば幸福に生きることができるか」を岸見さんと対話しながら一緒に考えていく構成になっている哲学書です。
【登場人物の紹介】
Aさん:大学3年生で就活中だが、親の希望先と自分の生きたい人生にズレがあり悩んでいる。
Bさん:社会人3年目で営業職に就いているが、ノルマ優先の働き方に悩んでいて婚約も破棄になり未来に悲観的になっている。
Cさん:社会人5年目で夢であるマスコミ関係の仕事に就いたがパワハラ上司との関係に悩んでいて、成功して自分に自信を持ちたい。
いかがでしょうか?登場人物の3人の悩みが少し分かる気がしませんか。哲学書といっても様々な切り口のものがありますが、「キレイごとじゃなく、今悩んでいることの解決の糸口になることを知りたい!」と思う方にこちたの本はぴったりな一冊ではないかと思います。
と、いうのもこちらの本は、岸見さんと3人の会話で進んでいくので、私たちが疑問に思うことを受講生たちが聞いてくれるので、とても分かりやすいのです。
例えば、P54の「世間的な価値観と闘え」の項目にて。
Cさん:「資本主義の世の中では、お金を稼げる人が偉くて、毎回評価制度があって、査定をされては、利益を出せない人はいらないといわれるようになっています。(中略)こんなにも、何かができる、何かを持っている人が評価されるという社会の流れがある中で、そこから外れて、上を目指さなくなったら自分がバカを見るのではないかと思います」と岸見さんに問います。
岸見先生:「そう思わなくてもいいのです。『本当のバカは、生産性で人を評価している人の方だ』、そう思った方がいい」。
Cさん:「ですが、就職活動では役に立つことをアピールできなければ、採用してもらえません」と岸見さんに訴えます。さて、岸見先生の答えは…?
このようにリズムよく会話が進むので先が気になり、夢中で最後まで読み進められるはずです。
筆者がこの本を手に取った時、とても精神的に辛い時期でしたが、受講生3人と岸見先生の対話を通して、「今自分が持っている価値観がもしかしたら自分を苦しめているのかもしれない」と気付きました。
この本をきっかけに、悩みにぶち当たった時は「その価値観は誰かが決めた物じゃない?自分で決めた物?」と自分に問いかけ向き合ようになりました。その結果、苦しさから少しずつ解放され、もっと自由に考えていいいんだと思えるようになりました。
人は知らず知らずのうちに外からの価値観を“普通だ”と思い、そこから自分が外れると「私は変なのかな?」と悩んでしまいやすいですが、この本はそういった常識や世間の価値観を疑いながら「自分の手ではどうにもならないこと」に絶望せず、自分の人生を幸せに生きるためにどうしたらいいのかを考えられる本です。
休日の朝に、思いにふけりながら自分と向き合いながらゆっくり読むのも良し、平日の朝の読書タイムに、目次から気になるテーマを読み進めるという読み方も良し。筆者の人生のバイブルなのでぜひともこの秋冬に読んでいただきたい一冊です。
全3回にわたって哲学書ラバーの筆者がおすすめの哲学書を紹介してきましたがいかがでしたか。気になる一冊は見つかりましたか?
哲学は、今悩んでいることに即効性があるハウツーを教えてくれたり、効率よく生きることを教えてくれたりする分野ではありません。それゆえ、もどかしく感じることがあるかもしれませんが、長い人生を見た時に哲学の知恵をきっとあなたの心に寄り添ってくれるものだと私は思います。
日々色々ありますが、「考えること」「悩むこと」そんな自分を最高だ!と思いながら今日も生きていきましょう^^それでは、また。
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倉口ゆうみさんコラム一覧
・「自分で考える力」を育もう!哲学書ラバーが厳選するオススメ入門図書Vol.1
・コーヒーで始める朝時間。1日をごきげんに過ごすためのカフェインとの付き合い方
・ 胃腸を整えて、元気になる。ゆらがない心を作る食事ルール3つ
・ 今日からはじめよう。ゆらがない心とカラダを育む3つの朝習慣
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【プロフィール】倉口ゆうみさん/ゆーみんの薬膳メンタル学主宰/国際薬膳調理師
人生について友人と語り合うこと、哲学書を読むのが趣味。朝はコーヒー片手に自分と向き合う時間#自分を深める自由研究 をするのが日課。普段は薬膳の講師をしたり主婦業を楽しんでいます。最近、分子栄養学の資格も取得。食と健やかさを研究することがライフワークです。繊細なのに体育会系な熱いハートも持っていてなんでも深めたいオタク気質。まったりのんびり過ごすのが好きです。夫と保護猫ちゃんと暮らしています。
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