藤井君への想いには蓋をした。
飛び込んでしまえば良かったのかもしれない。結局、誠士とも雪乃とも連絡をとらなかったのだから。
好きなものだけを見つめていたら良かった。
でも、蓋をしたから、誠士を笑顔で送り出せた。
雪乃のことは?
いつかまた、友達の関係に戻れると信じている。
誠士から、エアメールが届いた。
ロンドンの美女との写真付きだ。後ろには素敵な花屋さん。
ちょっと悔しかったけど、本当に美女で驚いた。
最後まで読むと、※マークがあって、これはイギリスの有名女優さんで、よく行く花屋の前で出会い、写真をとってもらえたと丁寧に書いてあった。誠士らしい。
ロンドンは雨が多くてじめじめしているから、朝がツライと書かれていた。
私がロンドンに行ったら、どうなっていたのかな、なんて笑って想像できるまで、わたしも回復していた。
「Let it go」
この文字だけは、誠士の直筆でかかれていた。
ちょっと古いでしょ、って笑ったけど、ありがとう、と思った。
物語の登場人物
立川萌乃(もえの) 28歳
静岡出身。銀行の一般職。趣味で、フラワーアレンジメントをならう。早起きできる朝美人に憧れている。
新城雪乃(ゆきの) 28歳
萌乃と同じ高校時代からの友人。なんでも出来る格好いい人物として萌乃からは頼りにされている。
藤井倫太郎(りんたろう)28歳
萌乃、雪乃と同じ高校のサッカー部出身で東京の大学へ進み、留学。外資系投資銀行につとめるいわゆるエリート。
木村ことみ 28歳
萌乃の同期で、同じ支店にずっと勤めている。常識人であり現実主義者。
柳原誠士(せいじ)28歳
萌乃とことみの同期入社である、総合職の銀行マン。
近藤裕太(ゆうた)24歳
萌乃がフラワーアレンジメントの教室の隣にあるパーソナルトレーニングスタジオのトレーナー。