(この物語は…毎朝のヨガ習慣をはじめてから108日目を迎えた、ヨガが好きなOL 紗季に、久々に起こる、恋と仕事の変化。朝のヨガスタジオで巻き起こる男女のハートフルなラブストーリー。小説のストーリーに合わせ、毎週おすすめヨガポーズをご紹介します。
最終週であるWeek 8は、再び、主人公紗季の視点でストーリーが展開します!)
Vol.55 Week 8 「本当にたいせつなものは」 (6)愛しているけど、終わりにしよう
しおりと別れたあと、ひとり散歩をした。
冷たい風に頼って、白金のチョコレート屋さんで、ついつい買ってしまっていたチョコレートを開けた。クランベリーのチョコレートを食べながら、恵比寿ガーデンプレイスまでたどり着いた。
真治との思い出の場所だ。
まだ付き合いも始めていない頃、ここでデートしたことがある。
真治はそう思っていなかっただろうけど、白金のチョコレート屋さんで偶然鉢合わせした後、お茶でもしようかとここまで歩いてきたのだ。
ちょうど、クリスマスシーズンのガーデンプレイスは、オーセンティックなクリスマスの装いで、青色や白色のLEDのイルミネーションがトレンドだったその当時、逆に新鮮で、温かい懐かしい気持ちになったのだった。
日本での思い出は、そのデートだけだ。
わたしはまた、溺れてしまうのかな。この気持ちに正直になったら。
オープンカフェでひとりコーヒーを飲んでいると、背後に気配を感じた。
わたしの肩にその手が触れた瞬間、それが誰かしっかり分かった。
優斗———。
「どうしたの?会社は?」
「たまにはこういうのもいいかなって。ドタキャン、会社」
けらけら笑っている優斗を見て、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
「紗季が、突然会いたいっていったり、ヨガ休んだり、ちょっとおかしいって思ってた」
今度の恋は絶対に手放したくないと思っていたから、気付かない振りしていたけど、心がないものを抱いても、満足は得られないから。
まだ紗季を僕のものにする前で良かったと思うんだ。心に嘘はつけない。
「サントーシャ。僕は見返りを求めないけど、女の子は見返りを求めて良いと思う」
「サティヤ。嘘はつきたくないから、かっこよく別れることはしたくない」
「サキ。愛してるけど、終わりにしよう」
どうしてわたしだけが、こんなにダメなんだろう。
LINEを開き、わたしは優斗のメッセージを見た。さっき言われたことと同じ内容だった。いつから優斗を傷つけていたのだろう。
そして、真治のLINEを開いた。
6時間前「これから日本へ発つ」と一言。
午後の仕事を淡々と終わらせ、定時に切り上げるとわたしは、成田へと急いだ。
(つづく)
今週のおすすめヨガ「ランジのポーズ(ひねり)」
Week 8のおすすめは「ランジのポーズ(ひねり)」。
ランジのポーズにひねりを加えたもの。ひねるポーズは内臓にほどよい刺激を与えます。深い呼吸とともに、身体を下腹部からゆっくりひねりましょう。
安定感を欠いたり、内臓が重かったり、さまざまな気付きから、自分の身体の状態が分かるようになりますよ。
「ランジのポーズ(ひねり)」の流れ
- 両手を床につき、片足をその両手の間、もう一方の足は、大きく後ろに。後ろの足のかかとで後方を押します。
- 状態をひねります。前方の足の太股の外側に、反対側のひじで押さえるようにひねります。深い呼吸を忘れずに。
(この小説は毎朝4時更新です。続きはまた明日!)
★この物語の登場人物
新城紗季(しんじょうさき/30歳)プロダクトブランド販売会社のマーケティング部につとめる。この物語の主人公。
アレクサンドル・ハミルトン(アレックス)(38歳)フランス系アメリカ人。ヨガスタジオを経営。
相場優斗(あいばゆうと/38歳)外資系投資銀行の行員。
桜井真治(さくらいしんじ/35歳)紗季と同じ会社でニューヨーク店勤務。紗季の元恋人。
東谷しおり(ひがしやしおり/25歳)ヨガ仲間のひとりで、紗季の会社の事務系OL。