(この物語は…毎朝のヨガ習慣をはじめてから108日目を迎えた、ヨガが好きなOL 紗季に、久々に起こる、恋と仕事の変化。朝のヨガスタジオで巻き起こる男女のハートフルなラブストーリー。小説のストーリーに合わせ、毎週おすすめヨガポーズをご紹介します。
最終週であるWeek 8は、再び、主人公紗季の視点でストーリーが展開します!)
Vol.53 Week 8 「本当にたいせつなものは」 (4)気持ちが分からないと言われても
優斗とは、恵比寿で待ち合わせをした。
ご飯を食べて、穏やかに時が過ぎていった。
「今日はどうしたの?」
食後のコーヒータイムに優斗が聞く。
「これまで大人の付き合いだからすこし遠慮してたけど、ちょっとわがままにデートのお誘いしてみようと思っただけだよ。ありがとね、そろそろ帰ろうか」
「ウチ、来ない?」
そういえば、まだ優斗の部屋を訪れたことがなかった。そのことにも特に違和感もなく、過ごしていた。
「ごめん、今日夜、やらなきゃなこと残していて。明日の朝、ヨガも行きたいし」
「そっか、わかった、じゃ帰ろうか」
優斗は、わたしが見えなくなるまで、手を振ってくれた。
わたしはとっくに気付いていた。真治への感情とは全く違うことに。恋をしていないことに。穏やかなのは、30の恋だからではないことに———。
スマホのディスプレイにはLINEのマークとメッセージが表示された。
「紗季の気持ち、ちょっと理解できない」
優斗の言わんとすることは分かる。優斗を好きになれれば楽なのに。
LINEが既読にならないように、わたしはそっとスマホをポケットにしまった。
次の日の朝、ヨガを休んだ。わたしはウチで、入念にストレッチをする。
たまったモヤモヤを吐き出したくて、ひねるポーズを長く、おおめに。
ぎゅっと内側にひねって、脱力することを繰り返す。
少しずつ身体と心が一致してくる感覚。
ヨガこそ、わたしの良きパートナーだ。さあ、どう行動すればいいのか。
そうしている間にしおりからLINEが入る。
「紗季さん、どうして今日はヨガに来ないの?」
そっちこそ、ニューヨークにいるんじゃなかったっけ?
(つづく)
今週のおすすめヨガ「ランジのポーズ(ひねり)」
Week 8のおすすめは「ランジのポーズ(ひねり)」。
ランジのポーズにひねりを加えたもの。ひねるポーズは内臓にほどよい刺激を与えます。深い呼吸とともに、身体を下腹部からゆっくりひねりましょう。
安定感を欠いたり、内臓が重かったり、さまざまな気付きから、自分の身体の状態が分かるようになりますよ。
「ランジのポーズ(ひねり)」の流れ
- 両手を床につき、片足をその両手の間、もう一方の足は、大きく後ろに。後ろの足のかかとで後方を押します。
- 状態をひねります。前方の足の太股の外側に、反対側のひじで押さえるようにひねります。深い呼吸を忘れずに。
(この小説は毎朝4時更新です。続きはまた明日!)
★この物語の登場人物
新城紗季(しんじょうさき/30歳)プロダクトブランド販売会社のマーケティング部につとめる。この物語の主人公。
アレクサンドル・ハミルトン(アレックス)(38歳)フランス系アメリカ人。ヨガスタジオを経営。
相場優斗(あいばゆうと/38歳)外資系投資銀行の行員。
桜井真治(さくらいしんじ/35歳)紗季と同じ会社でニューヨーク店勤務。紗季の元恋人。
東谷しおり(ひがしやしおり/25歳)ヨガ仲間のひとりで、紗季の会社の事務系OL。