(この物語は…毎朝のヨガ習慣をはじめてから108日目を迎えた、ヨガが好きなOL 紗季に、久々に起こる、恋と仕事の変化。朝のヨガスタジオで巻き起こる男女のハートフルなラブストーリー。小説のストーリーに合わせ、毎週おすすめヨガポーズをご紹介します。
最終週であるWeek 8は、再び、主人公紗季の視点でストーリーが展開します!)
Vol.54 Week 8 「本当にたいせつなものは」 (5)思いがけない報告
しおりは、2日も早く切り上げて帰国した。14時間のフライトがなんともったいないことか。しかも、真治の気持ちを聞かず、突き放して帰ってきたという。
しおりと話がしたくて、休暇をとっているしおりに合わせて、わたしも午前休をとった。
2人で朝から営業しているカフェに行き、フレンチトーストを頼んだ。こういう時の女子同士は、なんかいい。
「わたしの賭けなんです。紗季さんから教えてもらった賢さ、使い方間違ってるかもしれないけど、賭けをしなくちゃいけない気がして」
しおりらしい。
「でも、賭けの結果はもう見えてるんです。そんなことなら、NYのナイスガイと遊んでくればよかった。フライト代ほんと高くつきました」
「は?」
「紗季さん鈍すぎで、腹立つので何も言いませんけど、わたしのフライト代・・・」
「ちょっと、もう、何言ってるのよ?」
「真治さんに連絡したらどうですか?さっき優斗さんと話しましたけど、落ち込んでましたよ」
「そう・・・」
「いったいなんなんですか、紗季さん。どうして真治さんのこと遠ざけるの?」
なんでだろう。結局ずっと忘れられないでいるのに。傷つくのが怖くて怖くて。
わたしは優斗からの連絡に返信する言葉が見つからず、あれからLINEを開いていない。
わたしは、しおりに促されて、LINEを開いた。
優斗からのいくつかのメッセージと、真治からの1つのメッセージ。
「紗季さんは、そんなに素敵なのに、何が怖いの?」
わたしが怖がっている?
怖がっていたとして、それは相手を傷つけること?傷つけられること?
いや、違う。「好きになること」をだ。
相手を好きになることは、自分が自分でなくなる感覚があるからだ。
仕事とは違って、そのことばかり考えて、醜くなるからだ。そして、たくさんのことを求めてしまうからだ。
仕事をして、ヨガをして、自分をコントロールできるようになってきたのに、また乱されることが怖かったのだ。
近づけば真治のことを深く愛してしまうことを、わたしは分かっていたのだ。
結局わたしは、どちらのメッセージも開かなかった。
(つづく)
今週のおすすめヨガ「ランジのポーズ(ひねり)」
Week 8のおすすめは「ランジのポーズ(ひねり)」。
ランジのポーズにひねりを加えたもの。ひねるポーズは内臓にほどよい刺激を与えます。深い呼吸とともに、身体を下腹部からゆっくりひねりましょう。
安定感を欠いたり、内臓が重かったり、さまざまな気付きから、自分の身体の状態が分かるようになりますよ。
「ランジのポーズ(ひねり)」の流れ
- 両手を床につき、片足をその両手の間、もう一方の足は、大きく後ろに。後ろの足のかかとで後方を押します。
- 状態をひねります。前方の足の太股の外側に、反対側のひじで押さえるようにひねります。深い呼吸を忘れずに。
(この小説は毎朝4時更新です。続きはまた明日!)
★この物語の登場人物
新城紗季(しんじょうさき/30歳)プロダクトブランド販売会社のマーケティング部につとめる。この物語の主人公。
アレクサンドル・ハミルトン(アレックス)(38歳)フランス系アメリカ人。ヨガスタジオを経営。
相場優斗(あいばゆうと/38歳)外資系投資銀行の行員。
桜井真治(さくらいしんじ/35歳)紗季と同じ会社でニューヨーク店勤務。紗季の元恋人。
東谷しおり(ひがしやしおり/25歳)ヨガ仲間のひとりで、紗季の会社の事務系OL。