(この物語は…毎朝のヨガ習慣をはじめてから108日目を迎えた、ヨガが好きなOL 紗季に、久々に起こる、恋と仕事の変化。朝のヨガスタジオで巻き起こる男女のハートフルなラブストーリー。小説のストーリーに合わせ、毎週おすすめヨガポーズをご紹介します。
最終週であるWeek 8は、再び、主人公紗季の視点でストーリーが展開。そしていよいよ今日、最終回です!)
Vol.56(最終回) Week 8 「本当にたいせつなものは」 (7)バレンタインの奇跡
2017年のバレンタイン。ここは、ニューヨーク———。
凍えるほど寒いニューヨークの朝。
街ゆくひとも少なくて、日本ほどキレイでない歩道をすべらせるスーツケースがガタガタ騒がしい。
ホットチョコレートが冷めないうちに、一番会いたいひとを探す。
行きつけのベーグル屋の近く。
「いまどこ?」
電話口でいらだっている真治が、すれちがった気がするのは気のせい?
「いますれ違ったんですけど・・・」
2016年のバレンタインも、成田空港で、わたしたちは結局会えなかった。
その日のニューヨークからの便はすべて終わり、成田空港の電気も少し落ち着いた頃、バレンタインの奇跡はわたしたちに味方をしなかったのだと諦めて家路についた。
近くのコンビニでビールと唐揚げ棒を買って、バックからマンションの鍵を取り出して、目線をあげた瞬間、数時間探し続けたひとが視界に飛び込んできた。
「どうして、NH103便にのってなかったのよ」
「ごめん、ボストンから来た、しかも夕方には着いてた」
「だったら、LINEくれれば良かったじゃない」
「空港に来てくれるなんて、思ってもみなかったンだろ」
「だって、既読になったでしょ、わたしがどんな気持ちでこの数時間過ごしたと思ってるの」
自分でも呆れるほど、めちゃくちゃなことを言って、泣きわめいている。
いつの間にかわたしは、真治にすっぽり包まれていた。
「泣き止め、はい、これ」
頭の上にずっしり重い何か。
「オレのお気に入りのチョコレート。逆バレンタイン、もらってくれる?」
あのクランベリーチョコレート。
「成田から直行したんだ、ここに」
わたしも負けじと返す。
「あなたのお気に入りのチョコレート。本命バレンタイン、もらってくれる?」
365日、10,864km離れて暮らした後、今日からニューヨークで毎朝を迎える。
振り返って目をあわせる2人。吐く息が白くて少しかすんでみえる真治の顔。いまだにすれ違う2人だけど・・・。
The end.
(この小説は今回が最終回です。これまでお読みいただいた皆さま、ありがとうございました!)
今週のおすすめヨガ「ランジのポーズ(ひねり)」
Week 8のおすすめは「ランジのポーズ(ひねり)」。
ランジのポーズにひねりを加えたもの。ひねるポーズは内臓にほどよい刺激を与えます。深い呼吸とともに、身体を下腹部からゆっくりひねりましょう。
安定感を欠いたり、内臓が重かったり、さまざまな気付きから、自分の身体の状態が分かるようになりますよ。
「ランジのポーズ(ひねり)」の流れ
- 両手を床につき、片足をその両手の間、もう一方の足は、大きく後ろに。後ろの足のかかとで後方を押します。
- 状態をひねります。前方の足の太股の外側に、反対側のひじで押さえるようにひねります。深い呼吸を忘れずに。
★この物語の登場人物
新城紗季(しんじょうさき/30歳)プロダクトブランド販売会社のマーケティング部につとめる。この物語の主人公。
アレクサンドル・ハミルトン(アレックス)(38歳)フランス系アメリカ人。ヨガスタジオを経営。
相場優斗(あいばゆうと/38歳)外資系投資銀行の行員。
桜井真治(さくらいしんじ/35歳)紗季と同じ会社でニューヨーク店勤務。紗季の元恋人。
東谷しおり(ひがしやしおり/25歳)ヨガ仲間のひとりで、紗季の会社の事務系OL。