[あしたの朝ごはん]第48話:それはチャンスか誘惑か

 

(この物語のあらすじ)

フリーライターの莉子は、店主のハルコさんおいしい朝ごはんを作る「カフェ あした」の常連客。東京から遠く離れた架空の小さな街・夢野市で、愉快な人びとや魅力的な食材が出会って生まれる数々の出来事。

そんな日常の中で、主人公の莉子が夢をかなえる鍵を見つけていきます。第7週は「ピンチはチャンス?!」。

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第48話:それはチャンスか誘惑か

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(第7週:ピンチはチャンス?!)

「あまり知られていないのだけれど実は会長の親族は夢野市に多く住んでいてね、ご両親のお墓も市内にあるのよ。会長をエスコートするのが夢野支店の仕事」

そんな縁があったとは知らなかった。

「でね、会長が自伝もかねたビジネス書をシリーズで発行したいと考えているみたいで。そのライターを探しているの。

夢野ごひいきの会長だから、あなたの記事も読んでいてね。波多野さんのこと、気に留めてるみたいなの」

話を進めるにつれ、牧田さんの声のトーンが高くなってきた。

なるほど、だから夢野支社の経験者が出世していくわけだ。うーん、おそるべし日本のサラリーマン社会。

「あなたの書いた活字が本になることは間違いない。多くの人に読まれることも確実よ。だって、老若男女がよく知るビジネス界のリーダーの半世を書くんだもの」

「うちの会社は総合商社でしょう、実はいろんな分野にパイプがあるのよね。

これから先、芸能だってスポーツだって、ビジネスだってどんな分野にも波多野さんを紹介できる。いろんな分野でゴーストライターって求められているのよ。

会長の本がうまく仕上がったあとは、うちの会社を好きに使ってもらっていいの。

ゴーストライターの専門家として生きていったって、いつか本名で記事を書ける日がくるかもしれないじゃない」

突然の話に、言葉が出なくて、ただ牧田さんの話を聞いている。

「収入は保証するわ。印税のうち何パーセントかはあなたの取り分になる。売れれば売れただけ、報酬を受け取り続けることができるのよ。

その金額には口封じの意味合いもあることは忘れないでね。

それと、あくまで主体は会長なの。そこを履き違えないでほしいのよね。取材して会長の何かを暴いてやろう、なんていうのはNG。

良いことも悪いことも、会長の口から出てくる言葉がすべて。それを上手にまとめてくれればいいのね」

圧倒されてしまい、わたしは「はあ」と相槌を打つのが精一杯だ。

これという仕事はない毎日で、やっぱり生活は安定だなあと思う。

銀行の貯金はどんどん減っていく。会社を辞めてから、新しい服すら買っていない。贅沢をすることはできない。

夢野出身の大物の大企業会長。彼のライフヒストリーなら誰でも読んでみたいと思うはずだ。もしかしたら外国語に翻訳されて、世界に届くかもしれない。

でも、それってわたしのやりたい仕事かな。お金のために働くことにならないかな。

「じゃあ、早めに連絡いただけるかしら。住まいは東京できちんと用意しますから」

(明日の朝につづく)

今日のおすすめレシピ「考える前に、リラックス!ハーブ緑茶はいかが」

(ストーリーに関連するおすすめレシピや記事をご紹介します♪)

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ビジネス界のリーダーの半世をまとめるなんて…すごい仕事!と思う反面、それが莉子が本当にやりたいことなのかと考えると…読んでいるこちらまで、考えてしまいますね。

今日は、迷える莉子にそっと出してあげたい、リラックスできるハーブ紅茶のレシピをお届けします。大事なことを考える前は、ハーブティでリラックス!これ、とってもおすすめです♪

香る香る♪ハーブで緑茶」(by:luneさん)

レシピはこちら♪ >>

(この小説は毎朝4時更新です。続きはまた明日!)

★この物語の登場人物
波多野莉子(はたの りこ)・・・一人暮らしのフリーライター。30歳。夢野市で生まれ育つ。
ハルコ・・・朝ごはんだけを出す「カフェ あした」の店主。34歳。莉子に慕われている。

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朝の小説「あしたの朝ごはん」

毎朝更新。朝ごはんがおいしいカフェを舞台に、主人公が夢をかなえていく日常をつづるストーリー。
Written by

松藤 波

松藤波(まつふじ・なみ)
小説好きが高じて、家事のかたわら創作をする30代の主婦。好きな作家は田辺聖子、角田光代。家族がまだ起きてこない朝、ゆっくりお茶を飲みながら執筆するのが幸せなひととき。趣味は読書と、おいしいランチの店を探すこと。

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