[あしたの朝ごはん]第54話:農ある暮らし

 

(この物語のあらすじ)

フリーライターの莉子は、店主のハルコさんおいしい朝ごはんを作る「カフェ あした」の常連客。東京から遠く離れた架空の小さな街・夢野市で、愉快な人びとや魅力的な食材が出会って生まれる数々の出来事。

そんな日常の中で、主人公の莉子が夢をかなえる鍵を見つけていきます。最終週(第8週)は「種をまく」。

GW102_72A

第54話:農ある暮らし

これまでのストーリーはこちら >>

(最終週(第8週):種をまく)

自宅への帰り道、自転車をこぎながらハルコさんの言葉を思い出した。

「人の生き方ってさ、サンプルに触れないと分からない部分があるじゃない。

あ、こういう人生もありなんだ、とか、そんなに自分を縛らず生きられるんじゃないか、とか。

夢をかなえようと一生懸命生きている若者に限って、目の前のタスクをこなすことに精一杯で、視野を広げる機会が乏しくなってしまうと思う。

暮らしを発信するのに、書く仕事ほど強い武器はないと思う。

莉子ちゃんはいろんな生き方を伝えるライターになってほしいな。そのためにも、莉子ちゃん自身が幸せに生きてほしい」

自分のやりたい仕事を続けるために、食べるものをきちんと確保する。

休耕地の広がる夢野の田園地帯。その奥には山がそびえている。

「食べることに困らなかったら、人間、強くなれると思うの。

好きなことをして細々とお金を稼いでいけば生きていけるわよ。困ったときは、近所の人に助けを借りればいい」

「朝起きるとね、今日の朝ごはんメニューはなんにしようかしら、ってかごを持って畑に行くの。

スーパーに仕入れに行くんじゃなくてね。それってすごく贅沢なことだと思わない?」

ハルコさんから聞いた、印象的な言葉がこだまする。

わたしにも、できるかなあ。農業、挑戦してみようかなあ。

すっかり晴れ渡った自宅の窓から洗濯物を干しながら、みどり総合商社の牧田加奈さんに電話を掛けることを決意した。

頼まれたゴーストライターの仕事を断るために。

電話に出た牧田さんは、冷たく優しくもなく、ただ「分かりました。残念ね」とだけ言った。

わたしの代わり映えのしない日常が再び始まった。

6月最初の日曜日。

朝ごはんパーティーの当日は、抜けるような青空だった。

常連客にはハルコさんが作ったチラシを配って伝えていた。さて、何人がやってくるだろう。

わたしが到着すると、朝の宴はすでに始まっていた。

空き地の上にござを敷き、ハルコさんの家のなかから運んできたテーブルが置かれている。

ロールパンやサンドウイッチ、バゲットが並ぶ。薪をくべて釜で炊いたばかりのご飯が湯気を立てている。

トマトやきゅうり、ニンジンやダイコンの野菜スティックがグラスに。手作りマヨネーズやドレッシングが並び、ふたつの寸胴鍋には特製のスープが入っているはずだ。

(明日の朝につづく)

今日のおすすめ記事「摂りたて野菜やパンにぴったり!簡単ディップレシピ7選」

(ストーリーに関連するおすすめレシピや記事をご紹介します♪)

c1f70807e7d1cf26476e46c1045936a726c27748.750x0.none

ハルコさんの話を聞いて、心の迷いを解消できた莉子。よかったですね♪ハルコさんがギックリ腰になっていなければ、こんな機会もなかったわけで…そういう、めぐりあわせや「運」に恵まれること、ありますよね。

そして、朝ごはんパーティー、とっても楽しそう&おいしそう!青空の下で、朝の宴。気持ちよさそうで、うらやましいです。野菜スティックはもちろん、パンにもぴったりの、簡単美味しいディップレシピをまとめてご紹介します☆

簡単ディップレシピ7選はこちら♪ >>

(この小説は毎朝4時更新です。続きはまた明日!)

★この物語の登場人物
波多野莉子(はたの りこ)・・・一人暮らしのフリーライター。30歳。夢野市で生まれ育つ。
ハルコ・・・朝ごはんだけを出す「カフェ あした」の店主。34歳。莉子に慕われている。

これまでのストーリーはこちら >>

 

この記事を書いた人
Nice to meet you!

朝の小説「あしたの朝ごはん」

毎朝更新。朝ごはんがおいしいカフェを舞台に、主人公が夢をかなえていく日常をつづるストーリー。
Written by

松藤 波

松藤波(まつふじ・なみ)
小説好きが高じて、家事のかたわら創作をする30代の主婦。好きな作家は田辺聖子、角田光代。家族がまだ起きてこない朝、ゆっくりお茶を飲みながら執筆するのが幸せなひととき。趣味は読書と、おいしいランチの店を探すこと。

連載記事一覧

今日の朝の人気ランキング