[あしたの朝ごはん]第12話:LINE

 

(この物語のあらすじ)

フリーライターの莉子は、店主のハルコさんおいしい朝ごはんを作る「カフェ あした」の常連客。東京から遠く離れた架空の小さな街・夢野市で、愉快な人びとや魅力的な食材が出会って生まれる数々の出来事。

そんな日常の中で、主人公の莉子が夢をかなえる鍵を見つけていきます。第2週は「おにぎりに恋をして」。

第12話:LINE

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(第2週:おにぎりに恋をして)

「それ、LINE(ライン)のことですよ。ちょっといいですか」

前田さんのスマホを拝借し、アプリを立ち上げる。

「ヨンヒちゃんはどれですか? 連絡してみましょうよ」

前田さんが教えてくれたヨンヒちゃんの名前を開く。おにぎりの写真を撮り、送信ボタンを押した。

送ったと同時に、既読マークがつく。これじゃあ何のことか分からないだろう。

「前田さん、ヨンヒちゃんになにかメッセージありますか」

「そうねえ、〈あなたのエゴマがおにぎりになりました〉。うーん、それだけじゃつまらないか。

とにかく、帰ってきてほしいのよねえ、せっかく張り切って留学してきたのに、もったいなくってねえ」

わたしの手元を、ハルコさんと前田さんとケイと呼ばれたイケメンがじっと見つめた。

「〈おにぎりがエゴマと恋をした〉と。こんなところでどうでしょう」

わたしの提案に、一瞬、しらけた空気が流れた。が、「カフェ あした」の温かい空気が押しやってくれた。

送信ボタンを押した。

ヨンヒちゃんから無料通話の着信がかかった。受信ボタンを押して、前田さんにスマホを渡す。

「もしもし。ああ、ヨンヒちゃ……、うん、管理人の、前田ですけども。ん? もう一度、言って」

通話口を片手で押さえて、前田さんが戸惑い顔で助けを求めてくる。

「日本語がヘタになっとる。何を言ってるか、よく分からんで困ってまうわ」

「そうだ、じゃあ、スカイプしましょう」

わたしが提案すると、ハルコさんの目がきらりと光った。

「ちょっと貸していただけますか」と前田さんのスマホを握る。ほっとしたような前田さんの前で、ハルコさんの滑らかな英語が次々と展開される。

大学を卒業して以来、英語を使ったことのないわたしは、完全に語学アレルギーだ。

学生時代はカナダに2週間ほど短期留学したり、ラジオ英会話を毎日のように録音までして勉強していた。

社会人になってからはジャパニーズ・オンリー、イングリッシュはノーセンキュー、だった。

ハルコさんが「スカイプをやってるか、IDを教えてほしいのだけど」とヨンヒちゃんにしゃべったのであろうとは推測できた。

英語も得意なハルコさんはいったい、ナニモノなんだろうという不思議さがいっそう膨らむ。

無駄に毎日持ち歩いていたパソコンがこうして役に立つ日がくるとは思わなかった。

いつ東京の編集者から仕事を頼まれても、断ることがないように、ウェブカメラと音声を拾うマイクはばっちり用意していた。

この三種の神器が仕事につながればいいのに。

 

(明日の朝につづく)

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(この小説は毎朝4時更新です。続きはまた明日!)

★この物語の登場人物
波多野莉子(はたの りこ)・・・一人暮らしのフリーライター。30歳。夢野市で生まれ育つ。
ハルコ・・・朝ごはんだけを出す「カフェ あした」の店主。34歳。莉子に慕われている。

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朝の小説「あしたの朝ごはん」

毎朝更新。朝ごはんがおいしいカフェを舞台に、主人公が夢をかなえていく日常をつづるストーリー。
Written by

松藤 波

松藤波(まつふじ・なみ)
小説好きが高じて、家事のかたわら創作をする30代の主婦。好きな作家は田辺聖子、角田光代。家族がまだ起きてこない朝、ゆっくりお茶を飲みながら執筆するのが幸せなひととき。趣味は読書と、おいしいランチの店を探すこと。

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