[あしたの朝ごはん]第47話:やってきたのはチャンスか、それとも…

(この物語のあらすじ)

フリーライターの莉子は、店主のハルコさんおいしい朝ごはんを作る「カフェ あした」の常連客。東京から遠く離れた架空の小さな街・夢野市で、愉快な人びとや魅力的な食材が出会って生まれる数々の出来事。

そんな日常の中で、主人公の莉子が夢をかなえる鍵を見つけていきます。第7週は「ピンチはチャンス?!」。

FX10

第47話:やってきたのはチャンスか、それとも…

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(第7週:ピンチはチャンス?!)

「ゴ、ゴーストライター!?」

思わずわたしが大声を上げると、牧田加奈さんは人目を気にして、「しー」っと人差し指を口にあてた。

「まあ、落ち着いて聞いてちょうだい。あなたにとって決して悪い話ではないと思うの。いいえ、むしろ大きなチャンスだと思うわ」

牧田さんは背筋を正し、口元だけで笑顔を作った。瞳の奥に闘志の炎が揺らめいている。

ここは夢野ホテルのラウンジ。駅前にある夢野市唯一の高級感のあるホテルだ。

他の宿泊施設といえば、古めかしいビジネスホテルや民宿ばかり。

人口密度の低い土地柄のせいかホテルの人影はまばらだが、どのお客さんもぱりっとスーツを着込んだ紳士や淑女ばかり。ふかふかのじゅうたんに、クリーム色の革張りのソファ。

場違いなスニーカーが恥ずかしくて、足の指先に力が入ってしまう。せめて、化粧ぐらいちゃんとしてこれば良かった。後悔先に立たず。

一杯950円もするコーヒーを飲みながら、牧田さんと向き合う。

控えめながらきちんと引いたアイラインが目力を強めている。手元の名刺には「みどり総合商社 夢野支店 営業課長補佐」とある。

本人の話では、今年36歳という。カフェあしたの常連客だけれど、いつも難しそうな顔で経済新聞を読んでいたから、挨拶をしたこともなかったけど、年齢相応に見える。

話してみると、悪い人じゃなさそう。

驚いたのは並々ならぬ仕事への情熱だ。

絵に描いたようなキャリアウーマンで、4歳の息子は東京で働く夫に預け、単身赴任で夢野市に住んでいるらしい。

「わたしは大きな仕事がしたいの。自分の判断で大きなお金が動く快感がたまらなくて。そのためには手段を選ばないわ。

波多野さん、どうすればやりたい仕事ができるか知ってる?」

思わず口をつぐんでしまう。

まだよく分からないままなんだ。分からないから、とりあえず会社を辞めてフリーランスになってみたのだ。

口ごもっているわたしから視線をそらさず牧田さんは言った。

「決定権を持つ人間に気に入られること、これしかないわ。大きなものに飲まれることよ。それでね、ライターのあなたにお願いがあるの。絶対に無駄にはならない話よ」

そう言って、牧田さんはわたしに頼みごとを持ちかけてきた。

「うちの会長がお忍びで夢野市に来ているの、知ってる?」

(明日の朝につづく)

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(この小説は毎朝4時更新です。続きはまた明日!)

★この物語の登場人物
波多野莉子(はたの りこ)・・・一人暮らしのフリーライター。30歳。夢野市で生まれ育つ。
ハルコ・・・朝ごはんだけを出す「カフェ あした」の店主。34歳。莉子に慕われている。

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朝の小説「あしたの朝ごはん」

毎朝更新。朝ごはんがおいしいカフェを舞台に、主人公が夢をかなえていく日常をつづるストーリー。
Written by

松藤 波

松藤波(まつふじ・なみ)
小説好きが高じて、家事のかたわら創作をする30代の主婦。好きな作家は田辺聖子、角田光代。家族がまだ起きてこない朝、ゆっくりお茶を飲みながら執筆するのが幸せなひととき。趣味は読書と、おいしいランチの店を探すこと。

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