[あしたの朝ごはん]第18話:女子大生がママになる

 

(この物語のあらすじ)

フリーライターの莉子は、店主のハルコさんおいしい朝ごはんを作る「カフェ あした」の常連客。東京から遠く離れた架空の小さな街・夢野市で、愉快な人びとや魅力的な食材が出会って生まれる数々の出来事。

そんな日常の中で、主人公の莉子が夢をかなえる鍵を見つけていきます。第3週は「女友達と待ち合わせ」。

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第18話:女子大生がママになる

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(第3週:女友達と待ち合わせ)

わたしが東京の大学から正月に帰省して、国道沿いのファミレスで待ち合わせをした、膨れ上がったお腹の由美が歩いてきてびっくりした。

メールではサプライズがあると言っていたけれど、あまりの驚きに椅子から転げ落ちそうになった。当時の彼氏、つまり今のダンナさんが金魚のフンのようについてきていたのはほほえましかったけれど。

その後に会ったのは、わたしが就職してすぐのころ。よちよち歩きの女の子を連れた由美と一度会ったきり、近くに住んでいながら会えないままだった。

ボーダーのTシャツに、ボリュームのあるカーキ色のスカート。キュッと引き締まったウエストが、ママとは思えないスタイルのよさだ。

「由美、全然変わらないね」

「スカートはね、娘がはいてってうるさくて。下の男の子も、わたしがスカートをはくと喜ぶのよね。母はいろんな注文にこたえなくちゃならなくて。大変です」

由美は小さくため息をつくと、首を左右に倒してぽきぽきとならした。

胸元まで伸ばした髪は茶色く染めていて、女性誌のなかから飛び出してきたみたいにおしゃれだ。言葉とは裏腹に、育児や家事の疲れがにじみ出ていないのに驚かされる。

「上の女の子、遥ちゃんだっけ、だいぶ大きくなったよね?」

「小学校4年生。もう完全にオンナよ。生意気な口きくんだから。今朝もお母さんの朝ごはんは食べないって大喧嘩。女同士のバトルが炸裂したよ」

茶目っ気のある目をくりくりさせながら笑う。

「小4!」

あの時お腹にいた赤ん坊が、小学生になるなんて。その年月にわたしは何をしてきたのだろう。

大学を卒業して、就職して、失恋して、会社をやめて……。わたしにも小学生の子どもがいても不思議はないのだと、わが身のわびしさを嘆きたくもなる。

いや、ライターという夢を見つけて、一歩を踏み出したばかりなのだから。自分を肯定しなくては。がんばれ、大丈夫さ、わたし。

「遥ってば、いまはダイエットのことで頭がいっぱいなのよ。小学生向けの雑誌なんかすごいんだから。女の子が大人とおんなじ化粧して、細長い足を出して、ミニスカートはいて」

「アイドルが低年齢化してるからねえ」

背中を丸め、遠い目をしながら言うと、一気に老け込んだ気になる。

「そのくせ、成長期だからおなかがすくでしょう。食べないなんてありえないじゃない。隠れてこっそりチョコを食べてたから、叱ったの。道理に合わないでしょうって」

ああ、久しぶりで懐かしい。由美の「道理に合わない」。昔から、納得できないことがあるといつもこのセリフだ。

相手の目を見て、説き伏せるように言うから逃れられない。男子も先生も親も、由美の前では圧倒されっぱなしだったのだ。

「で、遥ちゃんは道理に従ってくれるわけ?」

(明日の朝につづく)

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(もちろん、ダイエットが気になる大人の女子たちにもおすすめですよ♪)

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(この小説は毎朝4時更新です。続きはまた明日!)

★この物語の登場人物
波多野莉子(はたの りこ)・・・一人暮らしのフリーライター。30歳。夢野市で生まれ育つ。
ハルコ・・・朝ごはんだけを出す「カフェ あした」の店主。34歳。莉子に慕われている。

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朝の小説「あしたの朝ごはん」

毎朝更新。朝ごはんがおいしいカフェを舞台に、主人公が夢をかなえていく日常をつづるストーリー。
Written by

松藤 波

松藤波(まつふじ・なみ)
小説好きが高じて、家事のかたわら創作をする30代の主婦。好きな作家は田辺聖子、角田光代。家族がまだ起きてこない朝、ゆっくりお茶を飲みながら執筆するのが幸せなひととき。趣味は読書と、おいしいランチの店を探すこと。

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