[あしたの朝ごはん]第3話:朝ごはん抜きなんて

 

(この物語のあらすじ)

フリーライターの莉子は、店主のハルコさんおいしい朝ごはんを作る「カフェ あした」の常連客。東京から遠く離れた架空の小さな街・夢野市で、愉快な人びとや魅力的な食材が出会って生まれる数々の出来事。そんな日常の中で、主人公の莉子が夢をかなえる鍵を見つけていきます。

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Vol.3 朝ごはん抜きなんて

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(第1週:おいしい朝ごはんをもとめて)

朝ごはんって大切だ。

一人暮らしのわたしに、朝に食卓を一緒に囲む決まった人はいない。さみしいと思わないのが、わたしのいいところであり、物足りないところでもあるのかもしれない。

朝といえばお米、という家庭に育った。

一人暮らしになったいま、自分だけのご飯をたいてもあまり美味しくない。だけど、朝ごはん抜きだなんて、一日の幸せが目減りするような、ちょっと損してる気がする。

2ヶ月前、会社をやめてフリーのライターになってから、最初に探したのは朝を居心地良く過ごせるカフェだった。

時間だけはたっぷりあるので、愛車(といっても学生時代からずっと乗り回しているオレンジ色の自転車)を乗り回して、住宅街にひっそりとたたずむ「カフェ あした」を見つけた。

一年前に店主のハルコさんが一人で開いたらしい。(そのころわたしはまだ会社員だったし、このお店の存在は知らなかった)

何が珍しいって、営業時間は朝の7時から11時のみ。朝ごはんだけの店なのだ。インターネットで検索してもお店の名前は出てこない。

お客さんは近所の常連と、その仲間がほとんど。たまに、興味を持った通りすがりの人が訪れるくらいだ。駅から近いせいか、まあまあにぎわっている。テーブルが3つ、カウンターが5席ほどの狭い店内は、8時前後ともなると、半分ほど埋まっている。

メニューは毎日、1つだけ。和食か洋食かいずれかのモーニングプレートで値段はきっかり500円だ。和食だとお米、洋食だとパンが主食のことが多い。

飲み物はコーヒーか紅茶を選べる。ハルコさんが一杯ずつ丁寧に入れてくれる。ハーブティーやルイボスティーや、ちょっとかわったものを飲める日もある。

調理も接客も店主のハルコさんひとりでまわしているから、雰囲気はのんびりしている。

ここに通い始めてまだ一ヶ月ほど。

ハルコさんが34歳だということしかしらない。ちょっとなぞめいた、すてきなお姉さんなのだ。

(明日の朝につづく)

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(この小説は毎朝4時更新です。続きはまた明日!)

★この物語の登場人物
波多野莉子(はたの りこ)・・・一人暮らしのフリーライター。30歳。夢野市で生まれ育つ。
ハルコ・・・朝ごはんだけを出す「カフェ あした」の店主。34歳。莉子に慕われている。

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朝の小説「あしたの朝ごはん」

毎朝更新。朝ごはんがおいしいカフェを舞台に、主人公が夢をかなえていく日常をつづるストーリー。
Written by

松藤 波

松藤波(まつふじ・なみ)
小説好きが高じて、家事のかたわら創作をする30代の主婦。好きな作家は田辺聖子、角田光代。家族がまだ起きてこない朝、ゆっくりお茶を飲みながら執筆するのが幸せなひととき。趣味は読書と、おいしいランチの店を探すこと。

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