[あしたの朝ごはん]第30話:好きだった人

(この物語のあらすじ)

フリーライターの莉子は、店主のハルコさんおいしい朝ごはんを作る「カフェ あした」の常連客。東京から遠く離れた架空の小さな街・夢野市で、愉快な人びとや魅力的な食材が出会って生まれる数々の出来事。

そんな日常の中で、主人公の莉子が夢をかなえる鍵を見つけていきます。第5週は「思い出す恋」。

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第30話:好きだった人

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(第5週:思い出す恋)

「思い出す人?」

ハルコさんが首をかしげた。

この人はどの角度から見ても、凛々しくて決まっている。わたしの失恋話にも耳を傾けてくれるかもしれない。

学生時代から4年ほど付き合っていた彼がいた。早田林太郎という。

東京にある大学のキャンパスで関西弁の男の子は目立った。一度なんか、学生食堂の列に並んでいたら、どっと地響きみたいな笑い声が聞こえたので振り向くと、林太郎が10人ほどの輪の真ん中で得意げにしゃべっていた。

林太郎は風が吹き抜けるようなさわやかな顔に、人を笑わせるユーモアがあり、誰にでも公平にやさしかった。

当然、女子からも男子からも人気があった。

そんな素敵な男子がなぜ地味で目立たないわたしと付き合ったのか。今でもなにかの間違いだったんじゃないかと思うことがある。

ドイツ語の授業で隣の席になったことがきっかけでわたしたちは知り合った。

単語の小テストをカンニングさせてあげたお礼に、ドイツビールをおごってくれるというので飲みに行き、その日から交際することになった。

もちろんわたしには初めての彼氏。

どこを好いてくれてるのか、皆目見当がつかなくて、不安がつのるのに、一方でわたしはどんどん彼を好きになっていった。わたしがおどおどしていると、林太郎はことあるごとに「普通」であることを褒めてくれた。

「莉子といてると、落ち着くねンなあ」

あまりに何度も言ってくれるので、いつしかわたし自身が林太郎の前にいるとき、「ホッとする相手キャラ」を演じるようになっていた。

林太郎が見たり聞いたりしたことをただ笑いながら聞いているのは、極上の幸せだった。

「平凡な自分像」の上にあぐらをかいていたのかもしれない、と、30歳になったいまなら、分かる。

「何年も前に付き合ってた人です。顔も忘れかけてますけど」

ハルコさんに向かって強がりを言ってる。

「30年も生きてると、出会いも別れもいろいろよね。莉子ちゃんが振ったの?」

「いえ、わたしの負けでした」

(明日の朝につづく)

今日のおすすめレシピ「関西といえば厚切り!スクランブルエッグのせトースト」

(ストーリーに関連するおすすめレシピや記事をご紹介します♪)

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さわやかで優しく、関西弁の林太郎…さらに話がおもしろいなら、そりゃあモテますよね!莉子の「負け」が何を意味するのか?それは明日のお楽しみ♪

さて、関西といえば、関東に比べて厚切りの食パンが売れるというのは、有名ですよね。そんな厚切りパンでつくる、とってもかわいいトーストレシピをご紹介します。大学生のさわやかな恋のイメージにもぴったり!?

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(この小説は毎朝4時更新です。続きはまた明日!)

★この物語の登場人物
波多野莉子(はたの りこ)・・・一人暮らしのフリーライター。30歳。夢野市で生まれ育つ。
ハルコ・・・朝ごはんだけを出す「カフェ あした」の店主。34歳。莉子に慕われている。

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朝の小説「あしたの朝ごはん」

毎朝更新。朝ごはんがおいしいカフェを舞台に、主人公が夢をかなえていく日常をつづるストーリー。
Written by

松藤 波

松藤波(まつふじ・なみ)
小説好きが高じて、家事のかたわら創作をする30代の主婦。好きな作家は田辺聖子、角田光代。家族がまだ起きてこない朝、ゆっくりお茶を飲みながら執筆するのが幸せなひととき。趣味は読書と、おいしいランチの店を探すこと。

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