[あしたの朝ごはん]第25話:ミントの葉でお茶を

 

(この物語のあらすじ)

フリーライターの莉子は、店主のハルコさんおいしい朝ごはんを作る「カフェ あした」の常連客。東京から遠く離れた架空の小さな街・夢野市で、愉快な人びとや魅力的な食材が出会って生まれる数々の出来事。

そんな日常の中で、主人公の莉子が夢をかなえる鍵を見つけていきます。第4週は「あなたの夢はなに?」。

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第25話:ミントの葉でお茶を

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(第4週:あなたの夢はなに?)

ハルコさんは得意げな顔をして、ガラスのティーポットに緑の葉っぱがぎっしりと詰まったお茶をカウンターに置いた。

「いただいたミントがたくさんあったから、ハーブティーにしてみたの。気分が落ち着くと食べ過ぎちゃうこともないし、ダイエット効果があるかもね」

由美がふたをあけると、青くさい草のにおいと鼻を突き抜けるさわやかな香りが湯気とともに広がった。

胸いっぱいに吸い込んで目を閉じると、自然に囲まれた別世界にふわりとワープできる感じ。香りの力ってすごいんだなあ。

「これって夢野大学のオーストラリア人の留学生が育てたミントですか」

わたしが聞くと、ハルコさんは「そうそう」とうなずいた。

わたしもミントをもらったけれど、どう使ったらいいか分からなくて、冷蔵庫に入れっぱなしにしていたのだった。

お湯を注ぐだけで立派なハーブティーになるなんて。帰ったら早速やってみよう。

「ごちそうさまでした」

遥ちゃんが丁寧に両手を合わせた。

「おいしかったです」とハルコさんに笑い、「ママ、おからのパンケーキ、うちでもやってみようよ」と由美に言った。

「よし、やってみよう。ハルコさん、ごちそうさまでした」

由美が財布を持って立ち上がったので、わたしもあわてて立ち上がる。

「おまご豆腐の店主は角田一徹くん、29歳。近寄るとやけどしちゃうくらい熱い男よ。面白い子だからぜひ行ってみてくださいね。

角田くんのところへ寄ってもらえれば、パンケーキのお代はいりません。おからはサービスで分けてもらったんです。おから料理って節約にもなるかも」

ハルコさんが肩をすくめて笑った。

「ミントティーももらいものだし。カフェあしたは夢野の皆さんの善意で経営しています、なんちゃって」

そうなのだ。カフェあしたに通い始めて2ヶ月ほどたって分かってきたことがある。

地元・夢野市でとれた旬の食材を、余すことなく上手に使う朝ごはんのメニューばかりが出てくる。おいしさの秘密は新鮮さと、ハルコさんの夢野産の食材を大切に活かそうという工夫なのだろうな。

「じゃあ今からお豆腐屋さんに行ってみよう」

由美とわたしは顔を見合わせて決めた。朝ごはんのお金を払い、とうに誰もいなくなった店を後にした。

(明日の朝につづく)

今日のおすすめ記事「胃腸にやさしくさわやか。レモンミントウォーター」

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さわやかなミント風味がおいしく感じる季節ですね。ハルコさんの言うとおり、気分が落ち着き、食べ過ぎを防止してくれそうなミントティーは、とってもたのもしい存在!

加えて、ミントには消化を助ける働きもあるそうです。これからやってくる蒸し暑い季節はもちろん、胃腸が疲れたとき、こんな「はちみつレモンミントウォーター」で気分も胃腸もすっきり!しませんか♪

料理研究家・五十嵐ゆかりさんの「はちみつレモンミントウォーター」21レシピはこちら♪ >>

(この小説は毎朝4時更新です。続きはまた明日!)

★この物語の登場人物
波多野莉子(はたの りこ)・・・一人暮らしのフリーライター。30歳。夢野市で生まれ育つ。
ハルコ・・・朝ごはんだけを出す「カフェ あした」の店主。34歳。莉子に慕われている。

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朝の小説「あしたの朝ごはん」

毎朝更新。朝ごはんがおいしいカフェを舞台に、主人公が夢をかなえていく日常をつづるストーリー。
Written by

松藤 波

松藤波(まつふじ・なみ)
小説好きが高じて、家事のかたわら創作をする30代の主婦。好きな作家は田辺聖子、角田光代。家族がまだ起きてこない朝、ゆっくりお茶を飲みながら執筆するのが幸せなひととき。趣味は読書と、おいしいランチの店を探すこと。

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