慶太さんは、目をまんまるくしていた。
そりゃそうだ。5ヶ月前とは言動まで別人なのだから。わたしは、リベンジ成功で微笑んだ。
安子は、本を一冊出すことになったらしい。ライフスタイルのムックだ。
安子のインスタは、フォロワーが1万人を越えており、中でも、私のために作ってくれた波の形をしたジンジャークッキーが評判になったのだそうだ。
「奈美のおかげよ」
安子はそう嬉しそうに報告してくれた。
私のおかげなんかじゃないこと、分かっているけど、少しでもきっかけとなったのなら、そんな嬉しいことはない。それが、親友ならなおさらだ。
髪の毛を切ってもらっている間、ダイエットの話やカンボジアの話を私は夢中になって慶太さんに話した。
あの時は、慶太さんの優しい言葉だけを聞きたくて、自分の話は我慢していたのに。
慶太さんは営業スマイルで私の話を聞いてくれた。でも、分かっている。ちょっとうんざりしていることも。
ヘッドスパをしている間、スマホを取り出した。
裕太とのトークを選択して
「また2kg達成したよ
ドルフィンへ行くのだけど、空いてたら、ご飯でもどう?」
(この小説は、毎朝4時更新です。続きはまた明日!)
物語の登場人物
佐藤奈美(30)特許取得を専門とする弁理士事務所に勤める事務員。
結城紗江(30)中堅劇団の舞台女優。奈美と大学サークルの同期。
森野由加利(30)投資銀行に勤めるキャリアウーマン。奈美と大学サークルの同期。
近藤安子(30)専業主婦。一児の母。奈美と大学サークルの同期。
遠野裕也(30)紗江の大学時代の恋人。
伊藤慶太(34)奈美の行きつけの美容室のスタイリスト。