【朝の小説:シンデレラの朝ごはん】1章「裏通りの午後」Vol.1 お気に入りの場所

 

37

その日は、朝起きてカーテンを開けた瞬間から、真夏日だと悟った。浅い青の空に、建物は照らされて黄色がかる。

 

夏は、女の季節だ。

そう、太っていなければ———。

 

潮風がほんのり香る日曜の午前。中華街駅の地上へ上がり一呼吸すると、元町本通りではなく一本裏の石畳の仲通りを迷わず選ぶ。

編集アシスタントをしていた頃、編集部の先輩はよく言っていた。

「時間に余裕があるなら、いつも違う道を歩け」

普段はできるだけ助言に従う私も、中華街駅に降り立った後だけは、いつも自動的にこの仲通りを歩く。

 

ふぅ。

 

変わらず私を迎え入れてくれる通りに、ほんの1秒足を止めて、歩き出す。その心の落ち着きは一瞬で、また私の心は少しざわつく。

なぜならば、あと10歩先の、煉瓦づくりの2階、その場所が近づいてくるからだ。

 

(この小説は、毎朝5時更新です。続きはまた明日!)

 

次回(Vol.2)を読む>>

 

記事一覧を見る >>

 

物語の登場人物

佐藤奈美(30)特許取得を専門とする弁理士事務所に勤める事務員。

結城紗江(30)中堅劇団の舞台女優。奈美と大学サークルの同期。

森野由加利(30)投資銀行に勤めるキャリアウーマン。奈美と大学サークルの同期。

近藤安子(30)専業主婦。一児の母。奈美と大学サークルの同期。

遠野裕也(30)紗江の大学時代の恋人。

伊藤慶太(34)奈美の行きつけの美容室のスタイリスト。

 

この記事を書いた人
Nice to meet you!

朝の小説シリーズ

毎朝読みたい小説シリーズ「やっぱり朝は、二度寝が好き。(完)」「シンデレラの朝ごはん(完)」
Written by

石垣モンブラン

幼少期から創作好きで、3歳児で替え歌発表(笑)、小学時代に学習発表会の脚本、絵本を制作、中学から新体操やダンスの振付をはじめる。現在は、小中学生のミュージカル劇団「リトル・ミュージカル」主宰。台詞をこどもたち全員で創るという他にはないミュージカルの脚本原案、作詞作曲、振付を担当。だけど大人の恋愛模様が大好き。ライトノベルや映像脚本も執筆し続ける。

連載記事一覧

今日の朝の人気ランキング