嘘、でしょう?
デブ、は明らかに私のことだ。
それもショックだけど、あれだけ優しい慶太さんから、女性に対する乱暴な言い方がショックだった。
我に返り、「すいません!」と大声をあげスマホを手にするまで、そこに立っているのが精一杯。逃げるようにその場を去り、石畳の通りをバタバタを走り抜け、普段ならタクシーに乗る公園までの道のりを駆け上がった。
ポツポツ
小さなしずくが私の頬を流れる。
これは、雨、だ。
スコールのような雨が降り始めた。それは今の私にとっては幸運の雨だ。
足はいつもの動きを覚えている。ずぶ濡れのまま、「ドルフィン」に足を運びカウンター席につく。
「マスター、ソーダ水」
「ひょっとして、奈美?」
意外な声が右側から聴こえてきた。
(この小説は、毎朝5時更新です。続きはまた明日!)
物語の登場人物
佐藤奈美(30)特許取得を専門とする弁理士事務所に勤める事務員。
結城紗江(30)中堅劇団の舞台女優。奈美と大学サークルの同期。
森野由加利(30)投資銀行に勤めるキャリアウーマン。奈美と大学サークルの同期。
近藤安子(30)専業主婦。一児の母。奈美と大学サークルの同期。
遠野裕也(30)紗江の大学時代の恋人。
伊藤慶太(34)奈美の行きつけの美容室のスタイリスト。