【朝の小説:シンデレラの朝ごはん】1章「裏通りの午後」Vol.2 空気を変えてくれる人

 

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美容室「bella」の重い扉を開く。

あ、いた。

この人に会いたくて、一ヶ月仕事を頑張っている。

「お待ちしておりました」

慶太さんは、深々と一礼をしてから、いつも私に手を差し出してくれる。席まで上手に案内してくれた後は、鏡越しに目を合わせて、

「いつも通り、キレイに?」

と、いたずらに聞く。

さっきまでのよそ行きな空気が、急にプライベート色に染まる。その瞬間がたまらないのだ。

心の機微を楽しめるようになったのは、慶太さんに出会ってからだ。私は、慶太さんマジックにかかっているのだろうけど、それを敢えて楽しみ、上手く返せるようにもなった。年を重ねるのは、悪いことばかりじゃない。

「思い切ってショートにしようと思うんです」

「似合うと思うけど、どうしてまた?」

そう、慶太さんはいつだって、安心する言葉を最初に返してくれる。

そう、ショートが好きだって、1ヶ月前ここへ来たとき話してくれたから。聞いてすぐに、ショートにする宣言は、直球過ぎて、流石に言い出せなかったから。

 

(この小説は、毎朝5時更新です。続きはまた明日!)

 

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物語の登場人物

佐藤奈美(30)特許取得を専門とする弁理士事務所に勤める事務員。

結城紗江(30)中堅劇団の舞台女優。奈美と大学サークルの同期。

森野由加利(30)投資銀行に勤めるキャリアウーマン。奈美と大学サークルの同期。

近藤安子(30)専業主婦。一児の母。奈美と大学サークルの同期。

遠野裕也(30)紗江の大学時代の恋人。

伊藤慶太(34)奈美の行きつけの美容室のスタイリスト。

 

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朝の小説シリーズ

毎朝読みたい小説シリーズ「やっぱり朝は、二度寝が好き。(完)」「シンデレラの朝ごはん(完)」
Written by

石垣モンブラン

幼少期から創作好きで、3歳児で替え歌発表(笑)、小学時代に学習発表会の脚本、絵本を制作、中学から新体操やダンスの振付をはじめる。現在は、小中学生のミュージカル劇団「リトル・ミュージカル」主宰。台詞をこどもたち全員で創るという他にはないミュージカルの脚本原案、作詞作曲、振付を担当。だけど大人の恋愛模様が大好き。ライトノベルや映像脚本も執筆し続ける。

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