実はわたしもびっくりしている。慶太はなんだかぽっちゃりした。
わけを聞くと
「店長になってストレスがあって」
という。この人も色々抱えていたんだと、笑ってしまう。
紗江や裕太と連絡を絶っていた1ヶ月の間、私はもっと積極的に行動した。
由加利が着々と進めていたカンボジアの小学校プロジェクト。エン エレメンタリースクールと名付けられた小学校の開校式に、私も参加1週間休みをとって参加したのだ。
エンと名付けたのは、ゆかりと読むこともできる「縁」から来ているそうだ。なにかと理由をつけたがる由加利らしい。
開校式は、雲一つない空に祝福された。
無邪気な顔をしてこれから始まることに胸を踊らせているこどもたち。
いつか由加利が話していたような切ない親子の物語もそこにはなく、みんなが無邪気な顔で話しかけてくる。人懐っこいその表情は、私のちっぽけな悩みたちのすべてを解決してしまうほどの威力があった。
慶太さんにも、言ってやる
「ぽっちゃりは好きじゃないんで」
「そんなストレスなんてちっぽけなものです」
(この小説は、毎朝4時更新です。続きはまた明日!)
物語の登場人物
佐藤奈美(30)特許取得を専門とする弁理士事務所に勤める事務員。
結城紗江(30)中堅劇団の舞台女優。奈美と大学サークルの同期。
森野由加利(30)投資銀行に勤めるキャリアウーマン。奈美と大学サークルの同期。
近藤安子(30)専業主婦。一児の母。奈美と大学サークルの同期。
遠野裕也(30)紗江の大学時代の恋人。
伊藤慶太(34)奈美の行きつけの美容室のスタイリスト。