久々に降り立った中華街駅。
あれから、髪の毛を切っていない。伸びに伸びていた髪の毛をさらすのも恥ずかしかったが、痩せてからここに来るという意地を優先した。
5ヶ月まで前慶太さんに会いたくて、3週間に一度通っていたのだから。
紗江からのメッセージは、裕也に会って、気持ちが復活したという内容だった。
裕也に紗江のことを話したのも、紗江に裕太のことを話したのも私だ。
お互いが後悔していて、いまだ頼っているようだった。
ダイエットして自信がついても、そこまで自分のために生きられない。
この2人の間で、私は、邪魔者になるかキューピットになるかだ。
いいコぶっているだけかもしれないけれど、それなら私はキューピットを選択する。
自分の気まずさをどうにも払拭しきれず、この1ヶ月、裕太へも紗江とも連絡をとらなかった。
「見とれたよ、奈美ちゃん」
慶太さんは目をまん丸くしていた。
(この小説は、毎朝4時更新です。続きはまた明日!)
物語の登場人物
佐藤奈美(30)特許取得を専門とする弁理士事務所に勤める事務員。
結城紗江(30)中堅劇団の舞台女優。奈美と大学サークルの同期。
森野由加利(30)投資銀行に勤めるキャリアウーマン。奈美と大学サークルの同期。
近藤安子(30)専業主婦。一児の母。奈美と大学サークルの同期。
遠野裕也(30)紗江の大学時代の恋人。
伊藤慶太(34)奈美の行きつけの美容室のスタイリスト。