【朝の小説:シンデレラの朝ごはん】4章「野心家の猫」Vol.40 一番結婚が早そうな私

 

vol40

「そして、この穏やかな環境だから出来る私なりの生き方を探そうってね」

にやっとした安子をみて、そうだ、猫だった、と再認識して私も笑った。

安子が言った、私のこと。一番早く結婚するって思ってた、おっとりした女子の私。

いまじゃ一番こじらせているけど。

「安子の見立ても外れたってことか」

私がふいに話すと、安子は私がどの話題のことに触れたのかすぐに感づいて

「でも、奈美はみんなに祝福されて幸せになると思うよ。

びっくりさせるのでもなく、大丈夫って心配させるのでもなく、みんなが拍手できるような幸せをね」

今度は穏やかな笑顔を見せた。

誰からも好かれる、それは才能だから。奈美のペースでいいじゃない、そう言った安子の表情が、少し寂しそうだったことには気付かないでいようと思った。

安子特製ジンジャークッキーをお土産にもたされ、安子のウチから出たとき、急に秋の風を感じた。

事件も事故もなかったけれど、今年の夏は、暑かったな。

生温い風を運んできたバスに乗り込んだ。

(この小説は、毎朝4時更新です。続きはまた明日!)

 

<< 前回(Vol.39)を読む

 

記事一覧を見る >>

 

物語の登場人物

佐藤奈美(30)特許取得を専門とする弁理士事務所に勤める事務員。

結城紗江(30)中堅劇団の舞台女優。奈美と大学サークルの同期。

森野由加利(30)投資銀行に勤めるキャリアウーマン。奈美と大学サークルの同期。

近藤安子(30)専業主婦。一児の母。奈美と大学サークルの同期。

遠野裕也(30)紗江の大学時代の恋人。

伊藤慶太(34)奈美の行きつけの美容室のスタイリスト。

 

この記事を書いた人
Nice to meet you!

朝の小説シリーズ

毎朝読みたい小説シリーズ「やっぱり朝は、二度寝が好き。(完)」「シンデレラの朝ごはん(完)」
Written by

石垣モンブラン

幼少期から創作好きで、3歳児で替え歌発表(笑)、小学時代に学習発表会の脚本、絵本を制作、中学から新体操やダンスの振付をはじめる。現在は、小中学生のミュージカル劇団「リトル・ミュージカル」主宰。台詞をこどもたち全員で創るという他にはないミュージカルの脚本原案、作詞作曲、振付を担当。だけど大人の恋愛模様が大好き。ライトノベルや映像脚本も執筆し続ける。

連載記事一覧

今日の朝の人気ランキング