「それにしても安子の持っているお皿、素敵だね」
「そう?ありがとう!いま、インスタグラムで朝ご飯をアップしてるの。そしたらお皿を揃えたくって、買いあさっちゃって。ダンナに見つからないよう隠してるの」
安子のインスタグラムを見ると、素敵な朝ご飯の写真で埋め尽くされ、1000人のフォロワーがいる。
びっくりしてずっと見入っていると、安子がおもむろに一言放った。
「マーサ・スチュアート」
「え?何?名前?」
「アメリカの主婦でね、家庭用品やら雑誌などビジネスで成功したカリスマ。彼女のライフスタイルに憧れた人は、マーサホリックとか言われて一世を風靡したの。日本で一番近いのは、栗原はるみさんかなぁ?」
「へぇ、主婦なのに、ビジネス?」
「そう、しかもね、マーサの会社は株式上場して、インサイダー取引で禁固刑にまでなるんだけど、服役中にヨガや織物を教えていたらしいわ。肝が座ってるよ。
そのあと会社に復帰したけれど、業績は低迷して、今年買収。でも、買収額は3億ドル以上だって!」
「そんな主婦がいるの!」
安子は平然と言った。
主婦こそビジネスできるのよ、と。
(この小説は、毎朝4時更新です。続きはまた明日!)
物語の登場人物
佐藤奈美(30)特許取得を専門とする弁理士事務所に勤める事務員。
結城紗江(30)中堅劇団の舞台女優。奈美と大学サークルの同期。
森野由加利(30)投資銀行に勤めるキャリアウーマン。奈美と大学サークルの同期。
近藤安子(30)専業主婦。一児の母。奈美と大学サークルの同期。
遠野裕也(30)紗江の大学時代の恋人。
伊藤慶太(34)奈美の行きつけの美容室のスタイリスト。