「そういえば、奈美は、どうしてダイエットしているの?」
安子の洞察力からすればすべてが見破られているような気がして、ほんの一瞬背筋に緊張が走ったけれど、正直に話をしてみたいと思った。
「担当の美容師さんのことが気になっていたの」
もう2ヶ月も前のあの日のことが、随分前のように感じたことが嬉しかった。安子に一部始終を話したあと、安子が大笑いするので、私もつられた。
「奈美って、いかにもって男がタイプだったのね、知らなかったよ」
その時々、優しい人になびいていたのかも。
私は、改めて自分の恋愛能力の低さにうなだれ、幼い私を遠ざけたくなった。
「実は、一番ロマンチストは、奈美だったんだね」
安子は、面白がってくる。ふと、シンデレラストーリーといった表現を裕也にも馬鹿にされたことを思い出す。
(この小説は、毎朝4時更新です。続きはまた明日!)
物語の登場人物
佐藤奈美(30)特許取得を専門とする弁理士事務所に勤める事務員。
結城紗江(30)中堅劇団の舞台女優。奈美と大学サークルの同期。
森野由加利(30)投資銀行に勤めるキャリアウーマン。奈美と大学サークルの同期。
近藤安子(30)専業主婦。一児の母。奈美と大学サークルの同期。
遠野裕也(30)紗江の大学時代の恋人。
伊藤慶太(34)奈美の行きつけの美容室のスタイリスト。