【朝の小説:シンデレラの朝ごはん】4章「野心家の猫」Vol.34 人生の片付け

 

vol34

「そう、紗江も一個片付いたか」

安子の言う意図が分からず、すかさず、その真意の説明を求めた。

「紗江のことだから、カジュアルな言い方したと思うんだけど、限界を見たっていうか、引退ってことでしょう」

「安子は、どうして紗江にそんなに厳しいのよ」

「違うわよ、紗江は良く頑張ったじゃない。やっと線をひけるところまで、納得できるところまで来れたってこと。言い方を変えれば、卒業」

「そんなことに出会えることだって奇跡よ。何年も、その世界で戦い続けられるって奈美にはあった?私には今まで、見つからなかったわ」

正論の数々に言葉を失った。

「わたしはそんなものが見つかる気がしなかったから、早くに恋愛を片付けたの。子育てはいま真っ最中。もうすぐ預けられると、一段落。

そして初めて自分のことに手がつけられるわ。先送りにしたのよ、見つからなかったから」

そんなことを大学生の時から考えて、計画的に人生を考えていたというのだろうか。

安子の頭の中を全く読めていなかった自分にも情けなかったが、安子が、これほどに計画的で野心家だという事実を受け止めきれず、しばらく呆然としていた。

(この小説は、毎朝4時更新です。続きはまた明日!)

 

<< 前回(Vol.33)を読む

 

次回(Vol.35)を読む >>

 

記事一覧を見る >>

 

物語の登場人物

佐藤奈美(30)特許取得を専門とする弁理士事務所に勤める事務員。

結城紗江(30)中堅劇団の舞台女優。奈美と大学サークルの同期。

森野由加利(30)投資銀行に勤めるキャリアウーマン。奈美と大学サークルの同期。

近藤安子(30)専業主婦。一児の母。奈美と大学サークルの同期。

遠野裕也(30)紗江の大学時代の恋人。

伊藤慶太(34)奈美の行きつけの美容室のスタイリスト。

 

この記事を書いた人
Nice to meet you!

朝の小説シリーズ

毎朝読みたい小説シリーズ「やっぱり朝は、二度寝が好き。(完)」「シンデレラの朝ごはん(完)」
Written by

石垣モンブラン

幼少期から創作好きで、3歳児で替え歌発表(笑)、小学時代に学習発表会の脚本、絵本を制作、中学から新体操やダンスの振付をはじめる。現在は、小中学生のミュージカル劇団「リトル・ミュージカル」主宰。台詞をこどもたち全員で創るという他にはないミュージカルの脚本原案、作詞作曲、振付を担当。だけど大人の恋愛模様が大好き。ライトノベルや映像脚本も執筆し続ける。

連載記事一覧

今日の朝の人気ランキング