【朝の小説:シンデレラの朝ごはん】4章「野心家の猫」Vol.33 素直になること

 

vol33

いつも安子は、間違っていない。

「久々に安子と話したかっただけよ。広ちゃんにも会いたかったし。ま、確かに2人のこともあるけどね」

安子は、そうでしょ、そうでもなきゃなかなか来てくれないじゃないの、少し不満そうにしてみせたが、それにも大人の余裕がある。

「これ、オーガニックの紅茶でね、香りはあまりないんだけど、苦みと酸味のバランスが絶妙なの」

普段は聞き逃す私だが、今は俄然興味がある。

裕也は言っていた。本当に混じりけのない、良い食材を選べるようになると、ダイエットは成功だと。

俄然興味を持った私は、安子に、食材はどこで買うのか、オススメのお店など矢継ぎ早に質問した。

「やっと奈美と共通の趣味を持てた感じ」

「確かに、安子の丁寧な生活は羨ましかったけど、自分にはできないって遠ざけていたかも」

「今度はオーガニックレストラン一緒に行こうよ」

私たちはいつになく盛り上がった。安子とこんな風に話せたのは初めてかもしれない。いつも素敵な笑顔を見せてくれているけど、本音をさらすのが怖かったのだ。

いつだって安子は、正しくて素敵で。私も由加利も紗江も、どこか偏っているから。

「それで、由加利と紗江は?」

「由加利はね、最近非営利法人を創ったのよ。カンボジアに学校を建てるんだって。流石由加利よね。でね、私もほだされて、その理事になっちゃったりして」

「それから、紗江は、劇団辞めたの」

(この小説は、毎朝4時更新です。続きはまた明日!)

 

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物語の登場人物

佐藤奈美(30)特許取得を専門とする弁理士事務所に勤める事務員。

結城紗江(30)中堅劇団の舞台女優。奈美と大学サークルの同期。

森野由加利(30)投資銀行に勤めるキャリアウーマン。奈美と大学サークルの同期。

近藤安子(30)専業主婦。一児の母。奈美と大学サークルの同期。

遠野裕也(30)紗江の大学時代の恋人。

伊藤慶太(34)奈美の行きつけの美容室のスタイリスト。

 

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朝の小説シリーズ

毎朝読みたい小説シリーズ「やっぱり朝は、二度寝が好き。(完)」「シンデレラの朝ごはん(完)」
Written by

石垣モンブラン

幼少期から創作好きで、3歳児で替え歌発表(笑)、小学時代に学習発表会の脚本、絵本を制作、中学から新体操やダンスの振付をはじめる。現在は、小中学生のミュージカル劇団「リトル・ミュージカル」主宰。台詞をこどもたち全員で創るという他にはないミュージカルの脚本原案、作詞作曲、振付を担当。だけど大人の恋愛模様が大好き。ライトノベルや映像脚本も執筆し続ける。

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