「マーサの会社が買収されたのは、一つの時代が終わったってこと。
これからはもっとミニマムで、“ちょっと素敵”っていうような生活が注目を集めると思ってる」
スナックをキレイに並べたお皿をテーブルに置いたあと、私を覗き込むように笑ってみせた。
猫だ。野心家だ。
由加利よりも、紗江よりも、人生の成功を掴んでいるのは安子だ。その冷静さによって。
由加利と紗江は、情熱。
だから、安子は1人なじまなかったのかもしれない。
私が、よく間に入るのは、きっと、そのどちらでもないから。
安子は私のことをロマンチストだと言ったけれど、それは自分のことが見えていないということだ。
私は、自分の人生に情熱も冷静もなく棚ぼた的な快楽を求めていただけかもしれない。
大学時代、一番恋愛体質だったのは、安子だ。学内で注目されている男子を見事にいとめたり、年上の社会人と付き合ったり、
様々なタイプと付き合う安子を少し軽蔑していた時もあった。
(この小説は、毎朝4時更新です。続きはまた明日!)
物語の登場人物
佐藤奈美(30)特許取得を専門とする弁理士事務所に勤める事務員。
結城紗江(30)中堅劇団の舞台女優。奈美と大学サークルの同期。
森野由加利(30)投資銀行に勤めるキャリアウーマン。奈美と大学サークルの同期。
近藤安子(30)専業主婦。一児の母。奈美と大学サークルの同期。
遠野裕也(30)紗江の大学時代の恋人。
伊藤慶太(34)奈美の行きつけの美容室のスタイリスト。