「誠士って、名は体を現す、の代表選手だわ」
「どういうこと?」
「あいつ、萌乃と出会った時から、萌乃のこと一筋なんだよ」
「ウソでしょ」
「相変わらずだね、萌乃はホント恋愛偏差値、低すぎ」
またしても、ボディブローをくらう。
「でも、誠士は確か、他行の女の子と付き合ってなかったっけ?」
「男はさ、色々試すのよ。
あと、振られるのが本当に怖いの。
本店の同期、みんなプライド高いでしょ。
でも最後に選ぶのは、初恋に近い感覚なんじゃないかな。
純粋な想いでぶつかってる感じするよ、誠士」
ことみの含蓄ある解説に聞き入ってしまった。
あのレストランは、半年前に前後1週間押さえていたんだって———。
やっぱり私の方が、恋愛偏差値低いんだ。
純粋な想いでぶつかる———。
「高校の時の彼女が忘れられない」
藤井君も、雪乃にぶつかったのかな。
やっぱり心が痛む。もう10年前に置いてきたものなのに。
最後に選ぶのは、初恋———。
見込みのない恋愛にうつつを抜かすのは、アラサーのやることじゃないか。
わたしは雪乃にメッセージを送った。
(この小説は、毎日更新です。続きはまた明日!)
物語の登場人物
立川萌乃(もえの) 28歳
静岡出身。銀行の一般職。趣味で、フラワーアレンジメントをならう。早起きできる朝美人に憧れている。
新城雪乃(ゆきの) 28歳
萌乃と同じ高校時代からの友人。なんでも出来る格好いい人物として萌乃からは頼りにされている。
藤井倫太郎(りんたろう)28歳
萌乃、雪乃と同じ高校のサッカー部出身で東京の大学へ進み、留学。外資系投資銀行につとめるいわゆるエリート。
木村ことみ 28歳
萌乃の同期で、同じ支店にずっと勤めている。常識人であり現実主義者。
柳原誠士(せいじ)28歳
萌乃とことみの同期入社である、総合職の銀行マン。
近藤裕太(ゆうた)24歳
萌乃がフラワーアレンジメントの教室の隣にあるパーソナルトレーニングスタジオのトレーナー。