でも、誠士の言うことは少し嬉しかった。だから、慌てて着替えてバスに飛び乗った。
雨の日の窓口は空いている。個人担当の窓口はなおさらだ。
ことみが話しかけてくる
「最近、なんかあったでしょ」
「え、なんもないよ」
「いやいや、見えるよー見える」
「やめてよ、高校時代に好きだった相手に再会しただけ」
「うわー、やっぱり!じゃあランチの時にね」
この手の話題は、少しオープンにしておいた方が、話が早く終わるだけでなく、人間関係が良好になるということを既に学んでいる。
ランチに、話の20%くらいだけ、ことみに話した。
うわさ好きのことみは、かなり興奮している様子。
でも、楽しそうにしてくれると、気持ちが楽になる。
最近、幸せを感じるレベルが下がってきた。
ことみが何やらスマホをいじっては、顔の表情をコロコロ変えている。彼氏とでもやりとりしているのかなと見ていたら、にんまりしながら言った。
「明日もランチね」
あ、しまった・・・と思った。
(この小説は、毎日更新です。続きはまた明日!)
物語の登場人物
立川萌乃(もえの) 28歳
静岡出身。銀行の一般職。趣味で、フラワーアレンジメントをならう。早起きできる朝美人に憧れている。
新城雪乃(ゆきの) 28歳
萌乃と同じ高校時代からの友人。なんでも出来る格好いい人物として萌乃からは頼りにされている。
藤井倫太郎(りんたろう)28歳
萌乃、雪乃と同じ高校のサッカー部出身で東京の大学へ進み、留学。外資系投資銀行につとめるいわゆるエリート。
木村ことみ 28歳
萌乃の同期で、同じ支店にずっと勤めている。常識人であり現実主義者。
柳原誠士(せいじ)28歳
萌乃とことみの同期入社である、総合職の銀行マン。
近藤裕太(ゆうた)24歳
萌乃がフラワーアレンジメントの教室の隣にあるパーソナルトレーニングスタジオのトレーナー。