「おっ早いな!オレのこと待ってたか」
今日は、いつにも増して対応する気にもなれない。
「どうしたの?」
こういう時こそ、冷静に応えるのが一番。
これもプログラミングだ。
「なんだよ、つれないな」
「いや、今日は雨だから」
「雨だと?」
はあ、空気が読めない人だらけだ。
「バスだからさ、早く出かけないとで」
「あ、そういうことか、ごめん」
「で、何?」
「あ、あの、あのな、今日の夜空けてあるよな?」
「うん、だって約束じゃない」
「はあ」
演技が下手な誠士だから、分かる。これは、安堵のため息だ。
「てか当たり前だよな、社会人として。お前終わる頃に支店に迎えいくから、おしゃれしてこいよ」
ぶちっと切れた。
えーっと。おしゃれって言った?
足元を見る。黒パンツにブーツ。
女の子に気を遣わせるなんて、出社直前にそんなこと言うなんて
ホント、空気読めないヤツ!
(この小説は、毎日更新です。続きはまた明日!)
物語の登場人物
立川萌乃(もえの) 28歳
静岡出身。銀行の一般職。趣味で、フラワーアレンジメントをならう。早起きできる朝美人に憧れている。
新城雪乃(ゆきの) 28歳
萌乃と同じ高校時代からの友人。なんでも出来る格好いい人物として萌乃からは頼りにされている。
藤井倫太郎(りんたろう)28歳
萌乃、雪乃と同じ高校のサッカー部出身で東京の大学へ進み、留学。外資系投資銀行につとめるいわゆるエリート。
木村ことみ 28歳
萌乃の同期で、同じ支店にずっと勤めている。常識人であり現実主義者。
柳原誠士(せいじ)28歳
萌乃とことみの同期入社である、総合職の銀行マン。
近藤裕太(ゆうた)24歳
萌乃がフラワーアレンジメントの教室の隣にあるパーソナルトレーニングスタジオのトレーナー。