[あしたの朝ごはん]第41話:早朝のバスターミナルで

(この物語のあらすじ)

フリーライターの莉子は、店主のハルコさんおいしい朝ごはんを作る「カフェ あした」の常連客。東京から遠く離れた架空の小さな街・夢野市で、愉快な人びとや魅力的な食材が出会って生まれる数々の出来事。

そんな日常の中で、主人公の莉子が夢をかなえる鍵を見つけていきます。第6週は「ふるさとが呼んでいる」。

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第41話:早朝のバスターミナルで

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(第6週:ふるさとが呼んでいる)

「連休は夢野に帰ります」

明くんからメールがきたのは電話の翌日だった。

会社に辞表を出したいけれども、親に黙って辞めるのは「スジじゃない」と思ったそうだ。電話でけんかになるのもいやだという。どうせ会社を辞めるのなら、と遠慮なく有給休暇をとって大型連休に戻ることにしたらしい。

せっかくだからカフェあしたに連れて行ってあげたい。バス停で落ち合う約束をした。

明くんが到着する日。

朝6時30分に着く東京からの夜行バスを出迎えに、夢野市駅のバスターミナルへと向かう。

東の空が白みかっている。小鳥の鳴き声がいつもより甲高く聞こえるのは、早朝の空気が澄んでいるからかもしれない。

初対面の誰かと朝早くに会うって初めて。ジャケットの襟元を立てて肌寒さをしのぎなら、ちょっと緊張して待つ。

高速バスはバス停に静かに滑り込んできた。降りてきた数人の乗客のなかで、明くんはひと目で分かった。いまどきの若者って感じ。電話で話した印象そのままだ。

灰色のニット帽を目深にかぶり、スウェットのパーカーを着ている。履き古したジーンズに黒いブーツ。長い距離を旅してきたというのに、手荷物は一つもない。

「手ぶらですか」

自己紹介より前に、思わず笑ってしまった。

「ぼく、スマホがあれば生きていけるタイプなんっす」

ズボンのポケットからのぞくスマホを指さし、人懐っこく二カっと笑った。憎めない、かわいいやつ。1人っ子のわたしに弟がいたら、こんな気持ちになるのかな。

日が昇り始める夢野市を歩く。自転車を押しながらたわいもない話をする。

街の中心を流れる小さな川に差し掛かり、明くんは足を止めた。

「夏にこの川で泳ぐのが大好きだったんすよ。今の子供たちも遊んでるのかな」

まぶしそうに川面に目をやる。「夢野は変わらないっすねえ」とつぶやく明くんの声が震えているように感じた。

「このお店に連れて来たかったんだ」

腕時計は6時50分を指している。カフェあしたの空色のドアにかかっているのは「CLOSE」の看板。開店前に来るのは初めてだ。

(明日の朝につづく)

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スマホがあれば生きていけるタイプの明くん。何はともあれ、莉子の声かけで、無事に夢野に帰省できてよかったです♪

深夜の高速バス、早朝に目覚めたとき、バッグの中にあったらうれしい、手作りサンドイッチバリエをご紹介します!

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(この小説は毎朝4時更新です。続きはまた明日!)

★この物語の登場人物
波多野莉子(はたの りこ)・・・一人暮らしのフリーライター。30歳。夢野市で生まれ育つ。
ハルコ・・・朝ごはんだけを出す「カフェ あした」の店主。34歳。莉子に慕われている。

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朝の小説「あしたの朝ごはん」

毎朝更新。朝ごはんがおいしいカフェを舞台に、主人公が夢をかなえていく日常をつづるストーリー。
Written by

松藤 波

松藤波(まつふじ・なみ)
小説好きが高じて、家事のかたわら創作をする30代の主婦。好きな作家は田辺聖子、角田光代。家族がまだ起きてこない朝、ゆっくりお茶を飲みながら執筆するのが幸せなひととき。趣味は読書と、おいしいランチの店を探すこと。

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