ポールダンスも少しずつ技が決まってきた。
紗江はやっぱり違う。姿勢や立ち姿の良さは、一朝一夕で太刀打ちできるものではないと思い知る。
紗江が戦ってきた10年は確固たるものだ。
「紗江やっぱりスゴいわ。当たり前だけど、かないっこない」
「奈美、裕也に会おうと思って」
紗江の切り込み方が急すぎて、うん、いいんじゃないとしか言えなかったことに落ち込んでしまった。
いつも斜め上の遠いところを見つめている紗江の表情が、さらに何も言えなくさせた。
ポールダンスのスタジオを出たあと、まだ生温かい夜が続いていた。
このところずっと雨だ。今日だけは、その雨に救われた。
私の落ち込みとは裏腹に、インスタのフォロワー数が増えていた。
(この小説は、毎朝4時更新です。続きはまた明日!)
物語の登場人物
佐藤奈美(30)特許取得を専門とする弁理士事務所に勤める事務員。
結城紗江(30)中堅劇団の舞台女優。奈美と大学サークルの同期。
森野由加利(30)投資銀行に勤めるキャリアウーマン。奈美と大学サークルの同期。
近藤安子(30)専業主婦。一児の母。奈美と大学サークルの同期。
遠野裕也(30)紗江の大学時代の恋人。
伊藤慶太(34)奈美の行きつけの美容室のスタイリスト。