【朝の小説:シンデレラの朝ごはん】3章「好き、嫌い」Vol.26 ポジティブとネガティブ

 

私は、スクリーンに名前が表示されるや否や、紗江に見つからないように、素早く、さりげなく、スマホを手にして、メッセージを確認した。

「揚げ物には手を出すな」

友達と飲みにいくということだけ、裕也に伝えていたからだ。

呼吸を忘れるくらいびっくりしていた私も、裕也の軽々しい調子に拍子抜けして、くすっと笑ってしまった。

まずい、そう思った瞬間

「裕也、なんて?」

女優の洞察力をなめてはいけない。私は、正直に伝えた。

「ははは、『揚げ物には手を出すな』だって。今日は飲み会だって伝えてたから」

自然にそう答えた。

紗江は、くすっと笑って「そう」とだけ答えた。

「人間関係ってさ、どちらかがポジティブになると、どちらかがネガティブになるんだってね。

裕也がそんなことを言い出したのは、私がどんどん調子があがって、主演を勝ち取るようになった時だったなって。

私が絶頂だったとき、裕也は、どん底にいたのかもしれない。

人間関係が例外なくそうだとしたら、あまりに悲しい。だから、みんな爆発させたい感情を押さえて、関係を崩さないようにしているのかな。

でも、女優は、そういう訳にいかないの」

 

(この小説は、毎朝5時更新です。続きはまた明日!)

 

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物語の登場人物

佐藤奈美(30)特許取得を専門とする弁理士事務所に勤める事務員。

結城紗江(30)中堅劇団の舞台女優。奈美と大学サークルの同期。

森野由加利(30)投資銀行に勤めるキャリアウーマン。奈美と大学サークルの同期。

近藤安子(30)専業主婦。一児の母。奈美と大学サークルの同期。

遠野裕也(30)紗江の大学時代の恋人。

伊藤慶太(34)奈美の行きつけの美容室のスタイリスト。

 

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朝の小説シリーズ

毎朝読みたい小説シリーズ「やっぱり朝は、二度寝が好き。(完)」「シンデレラの朝ごはん(完)」
Written by

石垣モンブラン

幼少期から創作好きで、3歳児で替え歌発表(笑)、小学時代に学習発表会の脚本、絵本を制作、中学から新体操やダンスの振付をはじめる。現在は、小中学生のミュージカル劇団「リトル・ミュージカル」主宰。台詞をこどもたち全員で創るという他にはないミュージカルの脚本原案、作詞作曲、振付を担当。だけど大人の恋愛模様が大好き。ライトノベルや映像脚本も執筆し続ける。

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