【朝の小説:シンデレラの朝ごはん】3章「好き、嫌い」Vol.23 女優になる時

 

vol23

紗江の舞台はいつも、由加利と安子と観劇するのだが、仕事の忙しさ、こどもの預け先がないという理由で断りをいれてきた。

初日でも楽日でもない日、私はひとり劇場に足を運んだ。紗江が飲みにいこうというので、終演後、ご飯へ出かけた。

迫真の演技を披露した後の、主演女優と2人でご飯を食べるのは、なんだが恥ずかしく、誇らしい。

私が炭水化物を食べずにいると、流石に紗江がそのことに気付き、

ほっそりしたね、

紗江に言われ、少し嬉しくなる。1ヶ月経過して、3キロの減量に成功していた。

「奈美がダイエットに成功するなんて何があったの?恋でもしているわけ?」

いまこのタイミングで、裕也のことを話しておくべきだと思った。

「実はさ、1ヶ月前裕也にばったり再会してね
裕也ったら20kgも減量していたの!それで、ダイエットの方法をいまレクチャしてもらってるんだ」

私は、一気に言葉を放った。人をよく観察している紗江に、私の胸の内を見透かされたのではないかと、冷や汗をかく。

紗江は、「そうなの」と一言放ったのみだったが、その横顔は女優の表情だった。

そう、紗江は、感情をごまかす時女優になる。

 

(この小説は、毎朝5時更新です。続きはまた明日!)

 

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物語の登場人物

佐藤奈美(30)特許取得を専門とする弁理士事務所に勤める事務員。

結城紗江(30)中堅劇団の舞台女優。奈美と大学サークルの同期。

森野由加利(30)投資銀行に勤めるキャリアウーマン。奈美と大学サークルの同期。

近藤安子(30)専業主婦。一児の母。奈美と大学サークルの同期。

遠野裕也(30)紗江の大学時代の恋人。

伊藤慶太(34)奈美の行きつけの美容室のスタイリスト。

 

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朝の小説シリーズ

毎朝読みたい小説シリーズ「やっぱり朝は、二度寝が好き。(完)」「シンデレラの朝ごはん(完)」
Written by

石垣モンブラン

幼少期から創作好きで、3歳児で替え歌発表(笑)、小学時代に学習発表会の脚本、絵本を制作、中学から新体操やダンスの振付をはじめる。現在は、小中学生のミュージカル劇団「リトル・ミュージカル」主宰。台詞をこどもたち全員で創るという他にはないミュージカルの脚本原案、作詞作曲、振付を担当。だけど大人の恋愛模様が大好き。ライトノベルや映像脚本も執筆し続ける。

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