【朝の小説:シンデレラの朝ごはん】3章「好き、嫌い」Vol.22 安心と愛情

 

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どっぷり芝居にハマった紗江は、芝居で生きていくことを決意。

公演スタッフの1人に裕也がいた。

裕也は、劇団代表の友人で、興味もないが、本番スタッフとして手伝わされていたらしい。

ローラを演じている紗江のことを最初は「キレイな子だな」と思った程度だったが、演技の迫真さに舌を巻き、引き込まれていった。

裕也は紗江に言った。「続けたらいいよ、舞台。きっと居場所が見つかる」

裕也には、紗江がローラにうつった。

ローラのコンプレックスは不自由な足だったが、紗江のコンプレックスは容姿に見合う自分がいないことだ。

しかし紗江には、自分の感情を役に投影する芝居の才能があった。

紗江の目に安堵の涙が溢れた。

悲しいとか、嬉しいとか、そういう、高まった感情ではなくて、ただ、大きな深い吸気とともに涙がすうっと流れた不思議な体験だった。

紗江は、裕也に度々心情を吐露することとなり、いつしか2人は、かけがえのない存在へと変化したのだ。私たち友人4人とも、よくご飯を食べたし一緒に旅行にいくこともあった。

紗江が、大学を卒業し、正式に今の劇団に属してからは、自然と距離が生まれ、離れることになったと言う。

もう数年前の話だけれど、2人の結びつきの強さを感じていたから、裕也に紗江の話は、したくない。

 

(この小説は、毎朝5時更新です。続きはまた明日!)

 

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物語の登場人物

佐藤奈美(30)特許取得を専門とする弁理士事務所に勤める事務員。

結城紗江(30)中堅劇団の舞台女優。奈美と大学サークルの同期。

森野由加利(30)投資銀行に勤めるキャリアウーマン。奈美と大学サークルの同期。

近藤安子(30)専業主婦。一児の母。奈美と大学サークルの同期。

遠野裕也(30)紗江の大学時代の恋人。

伊藤慶太(34)奈美の行きつけの美容室のスタイリスト。

 

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朝の小説シリーズ

毎朝読みたい小説シリーズ「やっぱり朝は、二度寝が好き。(完)」「シンデレラの朝ごはん(完)」
Written by

石垣モンブラン

幼少期から創作好きで、3歳児で替え歌発表(笑)、小学時代に学習発表会の脚本、絵本を制作、中学から新体操やダンスの振付をはじめる。現在は、小中学生のミュージカル劇団「リトル・ミュージカル」主宰。台詞をこどもたち全員で創るという他にはないミュージカルの脚本原案、作詞作曲、振付を担当。だけど大人の恋愛模様が大好き。ライトノベルや映像脚本も執筆し続ける。

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