ステーキハウスを出て歩いて帰るという由加利の背中を見ながら、異様にむしゃくしゃした。
六本木の高層マンションに向かう由加利と、これから地下7階にも及ぶ大江戸線の六本木駅を下る私。
由加利が悪いのではない。
何も反論できない、何もできない自分の情けなさに対して打ち手がない。
裕也のLINEが来ているのは分かったけれど、既読にならないようにメッセージを見なかった。
私は衝動的に買ったポテトチップスを一気に頬張った。
———気持ち悪い。
最近ナチュラルフードが多かったせいで、身体が受け付けなくなっているかも。
翌朝何も食べられずに出勤すると、デスクに、最近話題になっていた北欧発のスムージードリンクが置いてあった。「パンのお礼」と付箋がはってある。
————この字は伊藤さん?
私は伊藤さんに軽くおじぎをしながら微笑んだ。
いいことをするのと、いいものを飲むのは、身体が喜ぶんだ。
(この小説は、毎朝5時更新です。続きはまた明日!)
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物語の登場人物
佐藤奈美(30)特許取得を専門とする弁理士事務所に勤める事務員。
結城紗江(30)中堅劇団の舞台女優。奈美と大学サークルの同期。
森野由加利(30)投資銀行に勤めるキャリアウーマン。奈美と大学サークルの同期。
近藤安子(30)専業主婦。一児の母。奈美と大学サークルの同期。
遠野裕也(30)紗江の大学時代の恋人。
伊藤慶太(34)奈美の行きつけの美容室のスタイリスト。