由加利の饒舌さは加速していく。
「その人の顔や身体のラインを見れば、どんな暮らしをしているかは分かる。
見た目にすべて現れる、見た目で決めるなと言っている人こそ浅いのよ」
由加利の言うことは至極最もだが、でも、友人との会話にそんな話は望んでいない。
「奈美はさ、それほど人生に成功とか、認められたいとか、求めてないんだよ。それならそれでいいと思う」
「30になって流石に、このままじゃダメかなって思い始めて。
まずはダイエットね、へへへ」
私は早くこの話題を切り上げようと笑って見せた。由加利は、一瞬私の顔を見て、静止してから言う。
「じゃあ、トレーナーを紹介するわ。痩せたい!と思っている人はたいてい自分だけで管理できないの。成功したいならプロを雇った方が賢明よ」
雇う?
とてもじゃないけど、私の給料で雇えるはずがない。
悔しいけれど、由加利に、裕也という伴走者がいるということも話すことができなかった。
(この小説は、毎朝5時更新です。続きはまた明日!)
物語の登場人物
佐藤奈美(30)特許取得を専門とする弁理士事務所に勤める事務員。
結城紗江(30)中堅劇団の舞台女優。奈美と大学サークルの同期。
森野由加利(30)投資銀行に勤めるキャリアウーマン。奈美と大学サークルの同期。
近藤安子(30)専業主婦。一児の母。奈美と大学サークルの同期。
遠野裕也(30)紗江の大学時代の恋人。
伊藤慶太(34)奈美の行きつけの美容室のスタイリスト。