誠士は、ロンドン支店にもすぐに溶け込んだらしい。
同期の忘年会で、誠士の話で盛り上がった。誠士は、本当に人気モノだったんだと気がつく。
私は写真を撮ることで、自分の素直な気持ちを少しずつ取り戻してきていた。まるでセラピーのような時間だ。
恋愛偏差値は低いままだと思うけど、人生経験値少し、上がった気がしている。
半年休んでいたフラワーアレンジメントを再開することにした。
「萌乃さん」
この声の主は、そう、裕太だ。だから、休んでいたというわけだ。
「萌乃さん、どうしてLINEいなくなっちゃうんですか、あれから、倫太郎さんもなんかおかしいし」
「ごめん裕太君、アラサーになると色々あるんだって。悪気はないの!ごめんね」
「萌乃さん、今度ご飯いきましょうね」
「うん、ありがと」
「裕太!」 背後に女の子の声がした。
自信がなくて、自分の本当の気持ちが分からないと、たとえ人に好かれても、受け止められないのだと。またひとつ、曖昧だったことが分かった。
裕太君を振り返らずに、ぐっと扉を押しあけた。
(この小説は、毎日更新です。続きはまた明日!)
物語の登場人物
立川萌乃(もえの) 28歳
静岡出身。銀行の一般職。趣味で、フラワーアレンジメントをならう。早起きできる朝美人に憧れている。
新城雪乃(ゆきの) 28歳
萌乃と同じ高校時代からの友人。なんでも出来る格好いい人物として萌乃からは頼りにされている。
藤井倫太郎(りんたろう)28歳
萌乃、雪乃と同じ高校のサッカー部出身で東京の大学へ進み、留学。外資系投資銀行につとめるいわゆるエリート。
木村ことみ 28歳
萌乃の同期で、同じ支店にずっと勤めている。常識人であり現実主義者。
柳原誠士(せいじ)28歳
萌乃とことみの同期入社である、総合職の銀行マン。
近藤裕太(ゆうた)24歳
萌乃がフラワーアレンジメントの教室の隣にあるパーソナルトレーニングスタジオのトレーナー。