一瞬、誠士がこっちを見つめた。
わたしは笑って、ガッツポーズを見せた。誠士も笑った。
胸がきゅーっと締め付けられる。これで、終わったんだ、そう思った。
ごめん、とつぶやいた。
誠士は、3日後に飛び立つという。
ことみが言うには、あれから1ヶ月くらい荒れていたが、徐々に元気を取り戻して、ブロンズの美女をロンドンでゲットするって張り切っていたと。
「それ、強がりだからね」
ことみは、わたしを睨んで嫌みを言った。
「ごめん、本当にそう思ってる」
わたしはそれ以上言えることがない。
あの時、バーに現れたのが藤井君じゃなくて、誠士だったら、どうだったのだろうか。
人生に、たられば、はない。
ちょっとウソをつくけど、誠士に素敵なブロンズ美女が見つかればいい。
私はみんなより一足先に、会場を後にした。
(この小説は、毎日更新です。続きはまた明日!)
物語の登場人物
立川萌乃(もえの) 28歳
静岡出身。銀行の一般職。趣味で、フラワーアレンジメントをならう。早起きできる朝美人に憧れている。
新城雪乃(ゆきの) 28歳
萌乃と同じ高校時代からの友人。なんでも出来る格好いい人物として萌乃からは頼りにされている。
藤井倫太郎(りんたろう)28歳
萌乃、雪乃と同じ高校のサッカー部出身で東京の大学へ進み、留学。外資系投資銀行につとめるいわゆるエリート。
木村ことみ 28歳
萌乃の同期で、同じ支店にずっと勤めている。常識人であり現実主義者。
柳原誠士(せいじ)28歳
萌乃とことみの同期入社である、総合職の銀行マン。
近藤裕太(ゆうた)24歳
萌乃がフラワーアレンジメントの教室の隣にあるパーソナルトレーニングスタジオのトレーナー。