急いで、インスタを立ち上げると、思った通りのことがおきていた。
藤井君がアップした2人の影の写真に、見事にわたしがタグづけされていた。
朝の6時くらいにアップされている。そして、きっとこれは雪乃も見ている。
大混乱した。
大事なものを失うと分かった。でも同時に、嬉しかった。
そんな自分の感情についていけなくなった。しばらく、距離を置こうと思った。こういうとき、すぐに取り繕れば、墓穴をほるものだ。
雪乃は、私が連絡をとらない限り連絡してこない。わたしも、距離を置こう、それがいいと思った。
失いたくないからこそ、距離をとる、そういう選択肢が、いまならあると思えた。
だから、藤井君とも、誠士とも、雪乃とも連絡をとらなかった。
LINEアプリを削除した。そういう大人のフリをした。
数ヶ月後、
会社のメールに、誠士の壮行会の知らせが届いた。
(この小説は、毎日更新です。続きはまた明日!)
物語の登場人物
立川萌乃(もえの) 28歳
静岡出身。銀行の一般職。趣味で、フラワーアレンジメントをならう。早起きできる朝美人に憧れている。
新城雪乃(ゆきの) 28歳
萌乃と同じ高校時代からの友人。なんでも出来る格好いい人物として萌乃からは頼りにされている。
藤井倫太郎(りんたろう)28歳
萌乃、雪乃と同じ高校のサッカー部出身で東京の大学へ進み、留学。外資系投資銀行につとめるいわゆるエリート。
木村ことみ 28歳
萌乃の同期で、同じ支店にずっと勤めている。常識人であり現実主義者。
柳原誠士(せいじ)28歳
萌乃とことみの同期入社である、総合職の銀行マン。
近藤裕太(ゆうた)24歳
萌乃がフラワーアレンジメントの教室の隣にあるパーソナルトレーニングスタジオのトレーナー。