藤井君は言った。
高校の頃、私のことが好きだったと。
でも、全く自分のことを好きだなんて思ってもみなくて、告白してくれる子がいると断る理由もなく付き合っていたと。
3年の時私に近づこうとして、雪乃にも話してみたら、雪乃が悲しそうに、自分も藤井君が好きだと言ったらしい。
そんな雪乃をほおっておけず、付き合ったとのことだ。
そなたこそ、どこまで恋愛偏差値が低いのだ、藤井君。
雪乃には申し訳なく不謹慎な気もしたけれど、自分たちの鈍感さにおかしくて、大笑いした。
「じゃあなんで、裕太君とわたしの仲を取り持とうとしたの?」
「ああ、萌乃が僕のことを好きだって知らなかったから。知っていたらそんなことはしないさ。
僕は勝てる試合は必ず勝ちにいくんだけど、誤算。」
一瞬、おかしいと思った。
「オレが萌乃のこと好きだから」
そして、誠士の顔が浮かんだ。
でも、誘惑に負けた。
10年以上、想いを持ち続けた人と
やっと通じ合えるのだから。
(この小説は、毎日更新です。続きはまた明日!)
物語の登場人物
立川萌乃(もえの) 28歳
静岡出身。銀行の一般職。趣味で、フラワーアレンジメントをならう。早起きできる朝美人に憧れている。
新城雪乃(ゆきの) 28歳
萌乃と同じ高校時代からの友人。なんでも出来る格好いい人物として萌乃からは頼りにされている。
藤井倫太郎(りんたろう)28歳
萌乃、雪乃と同じ高校のサッカー部出身で東京の大学へ進み、留学。外資系投資銀行につとめるいわゆるエリート。
木村ことみ 28歳
萌乃の同期で、同じ支店にずっと勤めている。常識人であり現実主義者。
柳原誠士(せいじ)28歳
萌乃とことみの同期入社である、総合職の銀行マン。
近藤裕太(ゆうた)24歳
萌乃がフラワーアレンジメントの教室の隣にあるパーソナルトレーニングスタジオのトレーナー。