「おはようございます」
「あら、今日は早いじゃない」
こんなやりとりは、気持ちがいい。やっぱり、朝早起きしよう。小さな幸せが増えていく感じがする。
今日も仕事が終わった後はフラワーアレンジメントのレッスンだ。
先週の振替で、昨日から連続。詰め込む感じも悪くない。
今日は爽やかなアレンジメントができそう。
定時ちょうどに仕事を終え、足早に教室へ向かう。
教室の扉を開けようとしたその時、聞き覚えのある声を聞いた。
「お疲れさまでした」「ありがとう」
後ろを振り返った瞬間。
「あ、萌乃さん、こんばんは」
いつの間にか馴れ馴れしく話しかけてくる裕太がそこにいることは、理解している。
でも、私の視線を釘付けにしたのは…
この10年、静岡の潮風と同じく切なさと温かさを与え続ける存在———。
「立川?」
「う、うん」
「びっくり!変わってないなあ」
「藤井君こそ!・・・いや、なんだか立派になったね」
本当のことだ。
確かに高校時代から格好良かったけど、まぶしいくらい素敵になっていた。
(この小説は、毎日更新です。続きはまた明日!)
物語の登場人物
立川萌乃(もえの) 28歳
静岡出身。銀行の一般職。趣味で、フラワーアレンジメントをならう。早起きできる朝美人に憧れている。
新城雪乃(ゆきの) 28歳
萌乃と同じ高校時代からの友人。なんでも出来る格好いい人物として萌乃からは頼りにされている。
藤井倫太郎(りんたろう)28歳
萌乃、雪乃と同じ高校のサッカー部出身で東京の大学へ進み、留学。外資系投資銀行につとめるいわゆるエリート。
木村ことみ 28歳
萌乃の同期で、同じ支店にずっと勤めている。常識人であり現実主義者。
柳原誠士(せいじ)28歳
萌乃とことみの同期入社である、総合職の銀行マン。
近藤裕太(ゆうた)24歳
萌乃がフラワーアレンジメントの教室の隣にあるパーソナルトレーニングスタジオのトレーナー。