雲水(禅の修行僧)、俳優 星覚(セイガク)さん
坐禅と朝課で見つける本当の自分! 修行僧の朝の過ごし方
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朝の時間を考えるということは、夜の時間を考えるということ… それは、自分の生き方そのものを考えるきっかけにもなります。
プロフィール
1981年シンガポール生まれ。幼少時代をポーランド、イギリス、鳥取県で過ごす。慶応義塾大学卒業後、福井県の大本山永平寺で3年間の禅修行を経て現在雲水、俳優として活動中。インターネットのお寺「彼岸寺」(higan.net)の企画運営、ウェブマガジン雲水喫茶のマスターも務めている。
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世界に禅を伝えることが、日本で禅を伝えることになると常々思っていましたが、移住を考え、決意したのは昨年の大地震から一ヶ月の間でした。
僕はそれまで親友のプロコーチにいつも助けられていました。自分には無い視点で問いを投げかけてくれる人がいることがどんなに心強かったか。
嘘が次々と露呈し、どうすればいいか本当のところは誰にもわからない状態で、今こそ外からの視点が必要だと感じたことが、たくさんあるきっかけのうち大きな理由の一つです。
それまではまったく別の人生を思い描いていましたが、友人のご縁があった国際都市ベルリンに、住む場所はもちろん何の当てもないまま出かけました。
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ベルリンは緯度が高く、日照時間が短いのでみな朝陽が大好き。日の出を待ちわびてエネルギッシュに仕事をするパン屋さんなどの早起き職人を多く見かけます。
そんなベルリナーのエネルギッシュな朝時間の背景に「夜の過ごし方」の違いを感じます。日が沈むと皆仕事をやめてさっさと家に帰ってしまいます。不都合があってもあまり気にしない様子。それよりも家族や近所の人たちとゆったりとした時間を過ごし、たっぷり睡眠をとることを優先させているように感じます。
永平寺では18時以降は食事も口にせず静かに坐って身体と心を休めます。就寝のことを「開枕」といい、寝ることも能動的で大切な修行とされている生活との共通点を感じました。
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暁天(キョウテン)坐禅です。暁天とは夜明け前の空のこと。
夜の闇に包まれたモノトーンの部屋に、
朝陽が彩りと命の躍動を与えていく時間を
静かに坐って過ごすことが毎朝の楽しみになっています。
朝の引き締まった空気の中、冷たい水で顔を洗って、植物に水をやり、
線香をまっすぐに立てて坐禅をします。
毎朝の流れにのることで、
自分の身体の状態のわずかな変化や季節のうつりかわり、
気候の変化を感じることができます。
永平寺では朝起きてから顔を洗ってお水を備え線香をあげて坐禅をするまで
毎朝同じ流れで生活をします。
顔を洗う部位や順番まで代々伝わる
細かい作法が定められているのです。
時間がない時は5分でも10分でもかまいません。
毎朝同じことを、まっすぐやることが大切だと思っています。
坐る時は何も考えない、などと高尚なことは忘れます。
悲しいときは悲しい想いを、楽しい時は楽しい想いをめいいっぱい巡らせ、
時には伸びをしたり部屋を見渡したりもします。
ゆっくり自分の身体や心と向き合う大切な時間です。
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お粥、ごま塩、沢庵です。
永平寺では基本的に、365日朝はこのメニューです。
お粥はおなかに優しい、身体が元気になる、コストがかからない、
作るのが簡単、飽きがこない、トッピングで様々な食べ方を楽しめる等々、
朝ご飯として必要な要素が全て備わっています。
オートミールや雑穀で炊いたり、ヨーグルトやバナナ、
ドライフルーツ(案外おいしいです)を加えて
一味違ったおいしさを楽しんだりします。
前の晩にお米を研いできれいな水につけておけば、すぐにできあがり!
お粥はシンプルな料理だけに、食べる人の身体と心を映します。
何かをしながらでなく、只食べることだけに
ひたすら集中することで全く味が変わるのです。
味覚だけでなく、嗅覚、触覚、視覚、聴覚、
五感をフルに使えば使うほどおいしくなっていきます。
味が物足りないと感じたら、調味料を加えるのは簡単ですが、
自分の身体と心を顧みます。
大抵何かをしながら食べていたり、
時間が無くて浅い呼吸で食べていたり。
食べることはものをおなかにほうりこむことじゃないんだぞ、
と毎朝お粥を食べながら自分に言い聞かせています。
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暁天坐禅と朝課です。
朝課とは、朝の読経のことです。
仏陀から代々続く歴代和尚の名前を唱え、
先祖やまわりの有縁無縁の人々、環境全てに感謝し、
福壽無量を祈ることで元気をもらっています。
その際も、前述の通り毎朝のきまった流れにのるようにします。
私の場合は起きたら顔を洗って、植物に水をやり、線香を立てて、
坐禅をして、朝課、掃除、朝ご飯、とやることを決めています。
最初の「顔を洗う」ことを時間通りにやることが何よりも重要!
永平寺では、最も長く寝ていられる特別な日の起床時間が朝6時半。
そこで、遅くとも6時29分までには必ず起きて顔を洗うようにしています。
本当にツライ時は、顔を洗ってまた眠ってもいいのです。
大抵無理をしても最初の流れにのれば、
すっきりと目覚めて朝の流れにのることができます。
時間がない時のために
「大略(タイリャク)」を用意しておくのもポイントです。
あらかじめ本当に時間がない時の特別メニュー「大略」を決めておいて、
それを実行することで、「毎朝必ずやる」という心持ちを維持しています。
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夜の過ごし方です。 10時半に開枕(就寝)し、翌朝3時半におきる永平寺の生活でわかったことは、「早く寝れば、早く起きれる」ということです。
拍子抜けするほど当然なのですが、
色々な方法を試してきて結局これが一番効果的でした。
つまりよい朝を過ごすためには、
いかによい夜を過ごすかが重要なのです。
逆に言うと、深夜まで起きていて早起きをしようというのは
生理的に無理がある、ということをまず理解することが大切です。
ただし私も娑婆(しゃば)では10時半に床につけることはまずありません。
そこで内臓だけでも休ませてやるように気を使っています。
内臓と心は深いつながりがあります。
人間の生理現象の中心になっているのは内臓です。
いくら寝ても内臓が休んでいなければ心も身体も休まりません。
夜の食事は6時までにすませ、
その後はできるだけ食べ物を口にしないようにすると
例え遅くまで起きていても、朝の身体の調子が全く違ってきます。
もちろん夜仕事をしているとおなかが減ります。
その時は、「内臓君」をいたわる想いで我慢するのです。
付き合いで食べ物を口にしなくてはいけない時も
できるだけ消化の良さそうなものを選び、
よくよく噛んで「内臓君」を助けてあげてください。
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「朝寝坊」というのは、朝寝ている坊主と書きます。
お坊さんとしての責任をいつも感じてしまう言葉です。
昨年1月に108歳でお亡くなりになった、
永平寺の故禅師様が「坐禅をする時間がないと言っている者が、
それではその時間に何をしているかというと、
皆私利私欲のために右往左往しているだけじゃ」とおっしゃっていました。
確かに今、私が夜更かししてやっていることと言えば
まさに私利私欲のために右往左往、です。
人間は陽が沈めば眠り、陽が昇れば動き出す生き物なのだから
夜更かししてやっていることなんて所詮知れたものなのに、
と頭では思いながらも煩悩にとらわれて深夜を迎える毎日です。
朝の時間を考えるということは、夜の時間を考えるということ…
それは、自分の生き方そのものを考えるきっかけにもなります。
ともによい朝時間を過ごせるよう、工夫して精進していきましょう。
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朝美人のある一日の過ごし方
雲水(禅の修行僧)、俳優 星覚さん |
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5:59 |
起床 洗面 水やり 坐禅 朝課 朝食 |
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24:00 |
就寝 |
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7:30 |
スタジオで稽古 打ち合わせ |
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12:00 |
昼食 |
13:00 |
稽古 企画会議 |
18:00 |
夕食 |
19:00 |
稽古 読書 |
22:00 |
帰宅 PCチェック 執筆 夜坐 |
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今回の朝美人さんは、なんと修行僧(!)で俳優の星覚さん。
彼の朝美人インタビュー、いかがでしたでしょうか!?
普段あまり関わる機会がない“修行僧”という方の朝の過ごし方は、とってもシンプルで奥が深いですよね! 朝の過ごし方=夜の過ごし方…そして、それは人生に繋がっていくというお言葉がとても身に染みました。当たり前のことだけど、毎日を忙しく過ごしているとついつい忘れがちなことでもあります。ここ数年、女性たちの間で、“坐禅”が静かなブームとなっているようですが、シンプルな生活リズムを取り戻すきっかけになるかもしれませんね。
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この記事を書いた人
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自分らしく心地よい朝時間を楽しむ朝美人®さんにインタビュー!朝の過ごし方や、お気に入りの朝アイテム、朝習慣、朝活、朝ごはん、朝美容、朝のタイムスケジュールなど。
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