朝読書におすすめの本をご紹介する『まっこリ~ナのCafe BonBon』。小説やエッセイ、暮らしや料理の本など心に効く本をセレクトしています。
今日の「まっこリ~ナのカフェボンボン」の本棚は、『木になった亜沙』。
家で過ごす日に、何もかも忘れて読みたい愛の本。デビュー10周年を迎えた芥川賞作家・今村夏子の短編集、新刊です。表題作「木になった亜沙」をはじめ3編を収録しています。週末の読書にオススメです。
『木になった亜沙』
著者:今村夏子
出版社:文藝春秋
私が初めて読んだ著者の作品は『こちらあみ子』だったのだけれど、この本に登場する無垢で風変わりな亜沙や七未が、あみ子の分身のように思えてしかたなかった。一途な愛もその悲しみも、あみ子を彷彿とさせるのでした。
誰も私の手から食べてくれない。亜沙の悲しみの始まりは、おやつに食べたひまわりの種でした。仲良しの友だちに種を持っていくと「いい、いらん」。手のひらにのせて「おいしいよ」と勧めても頑なに拒否されてしまう。亜沙はただ、おいしいおやつを友だちにも食べてもらいたかっただけなのに。その後もずっと、亜沙が「これ食べて」と差し出したものは突き返されて、亜沙の手から食べてくれる人は誰もいなくて——「木になった亜沙」。
3つの作品はどれも愛についての物語。主人公の女性たちが悲しみの果てで誰かに寄せる愛の深さに胸をつかれます。そして、途方にくれた彼女たちがたどり着くのは予想をはるかに超えた場所。この世界にとどまり続けるには、その魂は無垢すぎるのかもしれません。彼女たちの見た風景に心がズキズキする。
今村夏子の描く世界に入り込んだあとは、なかなかこちらに戻ってこられない。ただならぬ物語をぜひ。
今村夏子さんの作品、こちらもぜひどうぞ。
*『こちらあみ子』
ラブ&ピースな一日を。
Love, まっこリ〜ナ
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