今日の「まっこリ~ナのカフェボンボン」の本棚は、『通天閣』。
大阪ミナミの町を舞台にした心にしみる傑作小説です。人気作家・西加奈子が、通天閣界隈に暮らすふたりの主人公を描きます。
『通天閣』
著者:西加奈子
出版社:筑摩書房
朝から出るのはため息ばかり。吐く息は白く光って、冬の寒さが身にしみる。人生をあきらめた四十過ぎの男と、突然去った恋人を待ち続ける若い女性。しょうもない。情けない。大切なものを失ったふたりはずっと、そんな気持ちを抱えながら都会の片隅で生きている。
男は行きつけの中華店で、女性店員に「いつものですね?」と笑顔で聞かれ動揺する。黙ってそっとしておいて欲しい、俺のことは忘れてもらわねば、と思う。女は「私たちは、別れたわけではない」とつぶやきつづける。
「俺には、何もない」「私には、本当に何もない」と人の温もりを感じることを自分から遠ざけているふたり。やがて、そんな彼らの人生が交錯する思いがけない出来事が起きる……。それはまるで、呪縛が解ける奇跡の瞬間に立ち会えたようで、心が強く揺さぶられるのです。
「阿呆のように愛そう」主人公のひとりの言葉に胸が熱くなる。どんなにしんどくたって、きらきら輝いていなくてもかまわない。でも、愛したい。きっとそんな気持ちがこみ上げてくる感動作です。
Love, まっこリ〜ナ
「まっこリ~ナのカフェボンボン」を読んでくださってありがとうございます。「カフェボンボン」が心ときめく本との出会いの場となりますように。
*朝読書のすすめ『まっこリ~ナのCafe BonBon』連載一覧はこちらです。
https://asajikan.jp/topics/cafebonbon/
朝読書のすすめ『まっこリ~ナのCafe BonBon』はこちら>>