[あしたの朝ごはん]第40話:理想と現実

 

(この物語のあらすじ)

フリーライターの莉子は、店主のハルコさんおいしい朝ごはんを作る「カフェ あした」の常連客。東京から遠く離れた架空の小さな街・夢野市で、愉快な人びとや魅力的な食材が出会って生まれる数々の出来事。

そんな日常の中で、主人公の莉子が夢をかなえる鍵を見つけていきます。第6週は「ふるさとが呼んでいる」。

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第40話:理想と現実

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(第6週:ふるさとが呼んでいる)

その晩、明くんにメールを送った。

チャットかと思うくらいすぐに返事がきた。電話で話をしようという。

すでに午後9時を回っているが、どうやら会社のパソコンの前に座っていたようだ。

「ホームページっすか? すんません、ぼく、全然わかんないんっすよね」

あっけらかんと言われて、期待が外れる。

「明くん、SEじゃなかったの? お父さんそう言ってたけど」

「いやあ、まあオヤジに言ったところでうるさく言われるだけだと思ってちゃんと言ってなかったっすけど。

たしかにパソコンが好きで、いまの会社に入りましたよ。けど結局、ぼくなんかただの雑用係で。ずっと営業やらされてます。技術的なことは全然だめっす」

会ったこともないわたしに、明くんはよくしゃべった。

「実はぼく、会社をやめようと思ってるんすよ。今も誰もいないオフィスで一人、残業っすよ。

東京ならおもしろいことあるんじゃないかって思ってきたけど、毎日会社と家の往復でしょ、疲れちゃって。

リセットしたいんすよねえ」

若さっていいなあ。見ず知らずの人に、愚痴って夢をしゃべって。屈託のなさに、アラサーのわたしはめまいがしてきた。

「まあ、まだ24歳でしょう。どんな風にでもやっていけるわ。がんばって」

あきれて電話を終わらせようとしたとき、明くんが急いで言葉を継いだ。

「あのう……。オヤジ、元気にしてますか」

やっぱりお父さんのことが気になっていたのか。

「うん、元気ですよ。釣りに集中したいみたいだけど、お店も頑張ってるみたい」

「そうですか」

 

しばらく沈黙があった。

「明くん、リセットするなら有給とって、ゴールデンウイークは夢野に帰ってこれば?」

「まじっすかー。いまさらどのツラ下げて帰るっていうんすかー」

「いいから、おいでって。そうよ、夢野もだいぶ変わったわよ。おいしい朝ごはんをごちそうするわ」

(明日の朝につづく)

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若い明くんと話していると、莉子がとってもオトナ女子に見えてきますね!(笑)

都会でひとり、夜遅くまで残業…きっとPCの使い過ぎで、疲れ目になっている明くんに作ってあげたくなる、疲れ目に効く朝ごはんをいろいろご紹介します♪ さぁ、明くん、夢野に帰ってくるでしょうか!?

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(この小説は毎朝4時更新です。続きはまた明日!)

★この物語の登場人物
波多野莉子(はたの りこ)・・・一人暮らしのフリーライター。30歳。夢野市で生まれ育つ。
ハルコ・・・朝ごはんだけを出す「カフェ あした」の店主。34歳。莉子に慕われている。

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朝の小説「あしたの朝ごはん」

毎朝更新。朝ごはんがおいしいカフェを舞台に、主人公が夢をかなえていく日常をつづるストーリー。
Written by

松藤 波

松藤波(まつふじ・なみ)
小説好きが高じて、家事のかたわら創作をする30代の主婦。好きな作家は田辺聖子、角田光代。家族がまだ起きてこない朝、ゆっくりお茶を飲みながら執筆するのが幸せなひととき。趣味は読書と、おいしいランチの店を探すこと。

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