[あしたの朝ごはん]第27話:働くって楽しい?

 

(この物語のあらすじ)

フリーライターの莉子は、店主のハルコさんおいしい朝ごはんを作る「カフェ あした」の常連客。東京から遠く離れた架空の小さな街・夢野市で、愉快な人びとや魅力的な食材が出会って生まれる数々の出来事。

そんな日常の中で、主人公の莉子が夢をかなえる鍵を見つけていきます。第4週は「あなたの夢はなに?」。

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第27話:働くって楽しい?

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(第4週:あなたの夢はなに?)

「莉子さんは、働いてるんですか」

「うん、ライターって言って、書く仕事をしているの。小さいころからの夢で、いまは夢を追いかけてる最中。なかなか方向性がはっきりしないけど」

自分で言いながら、恥ずかしくなった。でもその通りなんだ。

「働くって楽しいですか。うちのママは主婦だから、女の人が働くってどういうことかよく分からない気がする」

いつしか、わたしと遥ちゃんが並んで歩いている。離れて後ろを歩く由美にも会話は聞こえているはずだが、何も言わない。

わたしも実は由美に聞いてみたかったのだ。学生結婚して専業主婦になったけれど、働くことに未練はないのかな、と。

「うん、わたしは仕事が好き。自分が前に進める感じがするもの。世界が広がるっていうかな。仕事のない生活はつまんないかも」

思ったことを口走ってから、しまった、と思った。いまの発言、由美の気に触るんじゃないかな。

「実はね、私もやりたいことがあるんだ」

後ろから由美の声が聞こえて、わたしと遥ちゃんは同時に振り向いた。

「助産師になろうかと思って」

「助産師?赤ちゃんを取り上げる人のこと?」

出産経験のないわたしには馴染みのない仕事だけれど、聞いたことはある。

「うん。実は遥を産んだときからあこがれてたんだ」

以前に由美が難産の経験を話していたことを思い出す。

遥ちゃんを産んだのは20歳という若さだったので、お産は軽いだろうと甘く見ていたのにかなり苦労したらしい。陣痛がきてから出産までに丸2日かかったと話していた。

「ある助産師さんがずっとそばにいてくれて、声をかけてくれたの。ようやく遥が産声をあげた時、『きれいな赤ちゃん』って我が子のように目を細めながら抱っこしてくれて」

遥ちゃんが照れたように頬を膨らませた。

「学生だったし、正直言って出産に複雑な気持ちもあったから。助産師さんの言葉で、心から祝福されたって初めて実感できたんだ」

横断歩道の青信号が点滅して、3人で立ち止まる。

人も車もほとんど通らない小さな道路だ。わたし一人だったら信号を気にせずわたっていたかもしれない。

3人でゆっくりと足を止める。由美の夢、遥ちゃんの将来。歩きながら、こんなに素敵な話をきけるなんて。

「母になったからたどり着いた夢だね。由美ならどんなこともできるよ。昔からエネルギーのかたまりみたいな人だから」

わたしが言うと、由美は余裕をみせて笑う。高校時代のわたしがあこがれた、とびきりかっこいい顔で。

(明日の朝につづく)

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由美は難産で苦労して、遥ちゃんを産んだのですね。そのときの感動をずっと覚えていて、助産師になりたいと思っている由美、すてきです!

貧血になりがちな妊婦さんにはもちろん、女性には特におすすめの「鉄分たっぷり」朝ごはんで、由美のように元気でパワフルな女性を目指してみませんか♪

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(この小説は毎朝4時更新です。続きはまた明日!)

★この物語の登場人物
波多野莉子(はたの りこ)・・・一人暮らしのフリーライター。30歳。夢野市で生まれ育つ。
ハルコ・・・朝ごはんだけを出す「カフェ あした」の店主。34歳。莉子に慕われている。

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朝の小説「あしたの朝ごはん」

毎朝更新。朝ごはんがおいしいカフェを舞台に、主人公が夢をかなえていく日常をつづるストーリー。
Written by

松藤 波

松藤波(まつふじ・なみ)
小説好きが高じて、家事のかたわら創作をする30代の主婦。好きな作家は田辺聖子、角田光代。家族がまだ起きてこない朝、ゆっくりお茶を飲みながら執筆するのが幸せなひととき。趣味は読書と、おいしいランチの店を探すこと。

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