[あしたの朝ごはん]第17話:鉄の女

 

(この物語のあらすじ)

フリーライターの莉子は、店主のハルコさんおいしい朝ごはんを作る「カフェ あした」の常連客。東京から遠く離れた架空の小さな街・夢野市で、愉快な人びとや魅力的な食材が出会って生まれる数々の出来事。

そんな日常の中で、主人公の莉子が夢をかなえる鍵を見つけていきます。第3週は「女友達と待ち合わせ」。

ES006

第17話:鉄の女

これまでのストーリーはこちら >>

(第3週:女友達と待ち合わせ)

結果、由美は次点となった。

バスケットボール部の主将で、バンドのボーカルでもあり、医学部志望のアイドル的存在の先輩にはかなわなかった。負けたとはいえわずかな差で、生徒会長に性別や学年は関係ないということを証明する形になった。

「ずうっと夢野に住んでいるのに、このお店知らなかったわ」

うれしそうに店内を見回す専業主婦の由美は、わたしにとって鉄の女なのである。

「ここはね、とびっきりおいしい朝ごはんが食べられるの」

わたしは黒板を指さした。

〈発芽玄米ごはんのおにぎり、湯豆腐、ひじきの煮物〉

「わたしみたいに独り身なら朝ごはんを外で食べるのもありだけど、由美は家族がいるから食べてきたよね。飲み物だけにする?」

「いいの。わたし、いくらでも食べられるから」

由美はにやりと笑う。30歳。高校生のわたしたちは今の姿を見たらどう思うかな。とんでもなく遠い所に来てしまったような、まだ長い人生の入り口に立っているような。

「お待たせしました」

由美はハルコさんが運んだお盆を見ると軽く腕まくりをして、深く息を吸い込んだ。

「いただきます」とつぶやき、木のスプーンに手を伸ばした。

焼き物の深めの鉢に、一丁を半分にしたくらいの豆腐が湯気を立てている。濃いクリーム色のスープがかかり、刻んだネギと、もみじおろしものっている。

由美もわたしも、そのとろりとした美しさが気になって、まずスープをすくって口に入れる。

「うーん、おいしい。これ豆乳ですか?」

由美が目を開いてハルコさんに尋ねる。

「そうです。沸騰しないように温めて、蒸した木綿豆腐にかけたんです。夢野産の大豆を使っているから、甘みが深いと思いますよ」

「発芽玄米、気になってたんです。子どもたちが白いご飯がいいって言うから、家ではなかなか食べられなくて」

「今日みたいにごま塩やゆかりをかけて、おにぎりにしたらどうでしょう。もっちりしているから意外と喜んでくれるかも」

2人のやりとりは、初対面とは思えない。主婦のコミュニケーション能力の高さはあなどれない。

由美は20歳で子どもを産んだ。なんと夢野大学の2年生、現役の女子大生だった。

(明日の朝につづく)

今日のおすすめレシピ「豆腐×豆乳のスープ」

(ストーリーに関連するおすすめレシピや記事をご紹介します♪)

272ab4d5820516a6fceaa445ef75e6b3d31043ac.400x0.none

ハルコさんの作る、とろりとした豆乳湯豆腐も気になるけれど、朝はパン派!という方には、こんなスープはいかがでしょうか?ベーコン、玉ねぎ、豆腐など、身近な材料だけでつくれるのもうれしいですよね。パスタを入れても美味しそう♪

豆腐×豆乳のスモーキーな香りスープ」(by:Runeさん)

レシピはこちら♪ >>

(この小説は毎朝4時更新です。続きはまた明日!)

★この物語の登場人物
波多野莉子(はたの りこ)・・・一人暮らしのフリーライター。30歳。夢野市で生まれ育つ。
ハルコ・・・朝ごはんだけを出す「カフェ あした」の店主。34歳。莉子に慕われている。

これまでのストーリーはこちら >>

 

この記事を書いた人
Nice to meet you!

朝の小説「あしたの朝ごはん」

毎朝更新。朝ごはんがおいしいカフェを舞台に、主人公が夢をかなえていく日常をつづるストーリー。
Written by

松藤 波

松藤波(まつふじ・なみ)
小説好きが高じて、家事のかたわら創作をする30代の主婦。好きな作家は田辺聖子、角田光代。家族がまだ起きてこない朝、ゆっくりお茶を飲みながら執筆するのが幸せなひととき。趣味は読書と、おいしいランチの店を探すこと。

連載記事一覧

みんなの朝時間.jpツイート

今日の朝の人気ランキング