[あしたの朝ごはん]第8話:土鍋ごはん

(この物語のあらすじ)

フリーライターの莉子は、店主のハルコさんおいしい朝ごはんを作る「カフェ あした」の常連客。東京から遠く離れた架空の小さな街・夢野市で、愉快な人びとや魅力的な食材が出会って生まれる数々の出来事。そんな日常の中で、主人公の莉子が夢をかなえる鍵を見つけていきます。第2週は「おにぎりに恋をして」。

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第8話:土鍋ごはん

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(第2週:おにぎりに恋をして)

朝の日差しは新しい季節を映す。冬の冷たさが春の暖かさに押しのけられる。

居場所をなくした冷たい空気が、夢野市をとりかこむ低い山々へ戻っていった。街も人も日ごとに寒さを忘れていく。

4月。桜が開き、草木が芽吹き、花が競うように咲く、わたしの大好きな季節だ。わけもなく、なにか楽しいことが起きそうな予感がする。

「おはようございます」

空色の扉を開くと、お米がたける甘いにおいがドアの外にまで流れてきた。

今日のメニューはご飯だな。

いつも厨房に鎮座している、使い込まれた赤茶けた土鍋の小さな穴から泡が吹き出すぷくぷくという音が聞こえてくる。

パンとご飯がほぼ日替わりで出てくるカフェあしたは、店主ハルコさんのさじ加減一つでメニューが決まる。どの客もハルコさんの腕と食材を信頼しきっているから、なにが出てきてもおいしくいただく。

メニューを知ってがっかりしたり、店を出て行ったりする人は見たことがない。厨房の奥の黒板を見上げる瞬間は、いつも心がはずむ。

〈おにぎり、豆腐の味噌汁、ほうれん草のおひたし〉

「今日はおにぎりかあ、うれしいなあ。あたたかいお茶ってありますか」

「はい、とっておきのほうじ茶があるので、それを出すわね」

今日も5人ほどのお客さんで席は埋まっている。見覚えのある顔も増えてきた。

調理台の上に紙袋が置いてある。そうだ、昨日あの袋を抱えたかっこいい男の人とドアのところですれ違ったのだった。

「お待たせしました、どうぞ」

朝ごはんは小さなお盆にのって出てきた。平らな木の器におにぎりがふたつ並んでいる。朱色の漆器に注がれた味噌汁から湯気が上がっている。

ご飯に黄緑がかった小さなつぶが混ぜ込まれている。ハルコさんに尋ねようとしたが、他のお客さんの会計でレジに向かってしまった。

なんだろう。見慣れないけれど、雑穀かな。

(明日の朝につづく)

今日のおすすめレシピ「じゃこやナッツが入った雑穀おにぎり」

(ストーリーに関連するおすすめレシピや記事をご紹介します♪)

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「カフェ あした」のご飯の黄色のつぶつぶの正体はまだわかりませんが、食べごたえがあって香ばしい、おいしい雑穀おにぎり、朝ごはんにおすすめですよ♪

簡単♪じゃこと大葉とナッツの雑穀おにぎり」(by:decoさん)

レシピはこちら♪ >>

(この小説は毎朝4時更新です。続きはまた明日!)

★この物語の登場人物
波多野莉子(はたの りこ)・・・一人暮らしのフリーライター。30歳。夢野市で生まれ育つ。
ハルコ・・・朝ごはんだけを出す「カフェ あした」の店主。34歳。莉子に慕われている。

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朝の小説「あしたの朝ごはん」

毎朝更新。朝ごはんがおいしいカフェを舞台に、主人公が夢をかなえていく日常をつづるストーリー。
Written by

松藤 波

松藤波(まつふじ・なみ)
小説好きが高じて、家事のかたわら創作をする30代の主婦。好きな作家は田辺聖子、角田光代。家族がまだ起きてこない朝、ゆっくりお茶を飲みながら執筆するのが幸せなひととき。趣味は読書と、おいしいランチの店を探すこと。

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