[あしたの朝ごはん]第16話:あこがれの友人

 

(この物語のあらすじ)

フリーライターの莉子は、店主のハルコさんおいしい朝ごはんを作る「カフェ あした」の常連客。東京から遠く離れた架空の小さな街・夢野市で、愉快な人びとや魅力的な食材が出会って生まれる数々の出来事。

そんな日常の中で、主人公の莉子が夢をかなえる鍵を見つけていきます。第3週は「女友達と待ち合わせ」。

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第16話:あこがれの友人

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(第3週:女友達と待ち合わせ)

「ひっさしぶりー!」

開いたドアには懐かしい顔。小さな店内なのに、思わず立ち上がり、右手をぶんぶんと振って「久しぶりだねえ」とこたえる。

「名コラムニストを待たせてごめん」と由美はおどけた。

「読んだよ、広報。莉子、がんばってるじゃん」

初回のコラムは、夢野大学の留学生の寄宿舎の暮らしぶりを紹介した。

留学生は東京や大阪で暮らしたがる若者がほとんどで、夢野市にはのんびりした学生が多いみたい。夢野の特産米・ユメピカリを毎月送るように、実家から小遣いを渡されている中国人男子の話も書いた。

「記事を読んだ農家さんが喜んで、彼に10キロのお米をプレゼントしたらしいわよ」

ハルコさんがカウンターを拭きながら言った。胸がいっぱいになって、黙ってしまうわたし。久しぶりに会う由美に、活躍をみせられたのも誇らしい。

同級生だけど、由美はいつも私より前を行くまぶしい存在なのだ。

由美は生徒会の副会長だった。それも母校で初めての女子による副会長。おとなしくて目立たない存在だったわたしが、なぜか由美とは気が合った。

いまでもはっきりと覚えている。1年生の秋、生徒会長の選挙があった。

男女ほぼ同数の生徒数なのに、3年生の男子生徒が1人だけ立候補し、信任投票で選ばれるという暗黙のルールがあった。副会長は会長が適当に指名する。

そんな旧態然とした役員決めの場に、由美が名乗り出たのだ。「正々堂々と選挙で戦いたい」と。

あからさまに反対する声はなかったけれど、生徒も先生も、学校中が「お手並み拝借」と静観していた。

立候補を締め切ってから、投票日までは10日間。結局、由美のほかに3年生の男子2人が立候補した。複数の候補者が立ったのは異例だった。

にわかに選挙戦が盛り上がるなか、由美は新聞部員だったわたしに「共闘」を持ちかけてきた。

「選挙のためにかわら版みたいな新聞を作ってほしい」と。

たまに言葉を交わす同級生というだけの間柄だったけれど、由美の頼みは有無を言わせない迫力があった。

その後1週間ほどは記憶がない。A4の紙の裏と表にびっしりと文字を印刷した紙を書き、毎日のように配った。

由美のプロフィールに始まり、なぜ生徒会長に立候補したのか、どうすれば高校生活が楽しくなるか、生徒会はなんのためにあるのか、という由美の持論を次々と展開させたのだ。

由美が話し、わたしが書く。授業の合間の休憩時間も、昼休みも、由美の語りは止まらなかった。

わたしは、新聞部で使っていた職員室のお下がりの古ぼけたパソコンを叩き続けた。放課後になると印刷して、翌朝、由美と仲間たちが校門で配った。

(明日の朝につづく)

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莉子と由美が同級生だったのは高校生のとき。まさに青春ど真ん中!爽やかなレモンが似合いますよね。春から夏にかけて、朝時間やデザートに食べたい、甘酸っぱいハニーレモンゼリーをご紹介します♪

レンジで簡単ヨーグルトハニーレモンゼリー☆*。・」(by:Runeさん)

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(この小説は毎朝4時更新です。続きはまた明日!)

★この物語の登場人物
波多野莉子(はたの りこ)・・・一人暮らしのフリーライター。30歳。夢野市で生まれ育つ。
ハルコ・・・朝ごはんだけを出す「カフェ あした」の店主。34歳。莉子に慕われている。

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朝の小説「あしたの朝ごはん」

毎朝更新。朝ごはんがおいしいカフェを舞台に、主人公が夢をかなえていく日常をつづるストーリー。
Written by

松藤 波

松藤波(まつふじ・なみ)
小説好きが高じて、家事のかたわら創作をする30代の主婦。好きな作家は田辺聖子、角田光代。家族がまだ起きてこない朝、ゆっくりお茶を飲みながら執筆するのが幸せなひととき。趣味は読書と、おいしいランチの店を探すこと。

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