(この物語は…毎朝のヨガ習慣をはじめてから108日目を迎えた、ヨガが好きなOL 紗季に、久々に起こる、恋と仕事の変化。朝のヨガスタジオで巻き起こる男女のハートフルなラブストーリー。小説のストーリーに合わせ、毎週おすすめヨガポーズをご紹介します。
Week 5は、主人公である紗季との交際をスタートさせた優斗の視点でストーリーが展開します!)
Vol.32 Week 5 「39歳の初恋」 (4)運命の女神は迷う
息をきらしながら、ダッシュしてここまで来てしまった。ドラマだったらここで大音量の音楽が流れるのだろう、僕は自分の衝動に驚き、笑ってしまった。
港区にある古いビルをフルリノベーションした紗季の会社は、ダウンライトが美しい。
そのとき、ダウンライトの電球色でオレンジ色に輝くフロアが、真っ暗に変わった。
もう帰ってるかな、自分も想いに任せてここまで来るなんて、どうかしてる。
帰ろうとしたその時、紗季が暗闇のビルから出てきた。
やっぱり紗季は自分の運命を変える女神なのかもしれない。どうやって驚かせようか、そう考えている間に、紗季の背後から桜井真治が走ってきて、紗季の手を引いた。
僕が、「待て」と声を発する前に、真治は紗季を抱きしめた。
僕は完全に勢いを失って、その姿を見つめるしかなく、どれくらいの時間が流れたのだろう。紗季が振り払う様子がないことに、僕は完全に失意を感じた。
鼓動は収まらず、ずっと心臓がドキドキしていて、その失意が、「女のひとはずるい」失望に変わっていくようだった。
塀に背を寄せ、目をつぶって立ち尽くしている間に、紗季も真治もいなくなっていた。
変わった気でいたのは、ほんの一瞬のことで、僕は何にも変われてなんていなかった。紗季に女々しく思われるのも嫌だったが、自分が選ばれる自信が、どこにもなかった。
自分をスマートに見せる演出ばかりが頭を駆け巡って、結局どれにも意思決定できなかった。
おろかなのは、いつだって自分だ。
次の日の朝。
僕は早めにヨガスタジオにいた。
呼吸が浅くなっているのを、僕自身が感じていた。しばらくの間、チャイルドポーズをとって、僕は、心を落ち着けようとしていた。
紗季が来たら、どんな声で「おはよう」を言おうか。
(つづく)
今週のおすすめヨガ「チャイルドポーズ」
Week 5のおすすめは「チャイルドポーズ」。
ヨガでは、お休みや癒しのポーズとしても使われます。それだけ、リラックスすることができるということです。ただ単なるお休みではなく、呼吸を落ち着かせ、内臓を刺激し、力を抜くことができます。
出来るだけ、背中を緩めて自由な背骨を作り、呼吸に注目します。呼吸が整うことで、さらに骨・筋肉ともに動かすことができ、自由な上体を作ることができますよ!苦しい時、休みたい時、朝起きるときにおすすめ。
「チャイルドポーズ」の流れ
- 膝をたて、両膝に均等に体重がかかるようにしまっすぐ立つ。また、足先の親指と親指を重ね合わせておく。
- 両かかとにおしりをおとし、上体はリラックス。この時腰が後に落ちてしまわないように、注意しましょう。息を吐きながら、ゆっくり膝を床の方へ向かって開いていきます。
- 息を吐きながら、上体を前傾します。なるべく前方へ手をひっぱります。
(この小説は毎朝4時更新です。続きはまた明日!)
★この物語の登場人物
新城紗季(しんじょうさき/30歳)プロダクトブランド販売会社のマーケティング部につとめる。この物語の主人公。
アレクサンドル・ハミルトン(アレックス)(38歳)フランス系アメリカ人。ヨガスタジオを経営。
相場優斗(あいばゆうと/38歳)外資系投資銀行の行員。
桜井真治(さくらいしんじ/35歳)紗季と同じ会社でニューヨーク店勤務。紗季の元恋人。
東谷しおり(ひがしやしおり/25歳)ヨガ仲間のひとりで、紗季の会社の事務系OL。